住宅の外観を決める時の注意事項とは
2021/11/29
住宅の外観は、単純に好みのデザインで決めたら良いと思っていませんか?
実は機能を合わせて考えておかないと建てた後で後悔することになり兼ねません。
ここでは、「外観デザインの種類」と「外観デザインがもたらす機能」を挙げていきたいと思います。
外観デザインの種類
外観デザインは大きく「屋根形状」と「〇〇風〈デザインスタイル〉(建物形状と素材や色)」の2つで決まります。
➀屋根形状
近年主流の屋根形状は、「切妻屋根」「寄棟屋根」「片流れ屋根」「陸屋根」の4つです。
ⅰ.切妻屋根
切妻屋根は、シンプルで施工もしやすく、和風でも洋風でも似合うため日本では最も普及している屋根形状です。
■メリット
・コストが安い。
・雨漏りのリスクが低い。
・屋根面が広く、ソーラーパネルが設置しやすい。
・屋根裏部屋が設置しやすい。
■デメリット
・妻面(三角に切れた面)は劣化しやすい。
・最も普及している屋根形状名のため、デザインで個性を出しづらい。
ⅱ.寄棟屋根
寄棟屋根は、四方の面と面が合わさった屋根形状です。
■メリット
・耐風性が高い。
・落ち着きある外観になる。
・全方位の外壁を雨や紫外線から守ることが出来る。
■デメリット
・コストが高い。
・1つ1つの屋根面が狭いため、ソーラーパネルは設置しにくい。
・棟が多いので雨漏りのリスクがある。
・小屋裏換気をする場合は換気効率が悪い。
ⅲ.片流れ屋根
片流れ屋根は、一面で構成され、一方にだけ傾斜がある屋根形状です。
■メリット
・スタイリッシュな形状で、デザイン性が高く、個性が出しやすい。
・屋根面が広く、ソーラーパネルが設置しやすい。
・コストが安い。
・屋根裏部屋が設置しやすい。
■デメリット
・耐風性が低い。
・雨水が片側に流れるため、雨樋への負担が大きくなる。
ⅳ.陸屋根
陸屋根は、傾斜がなく、平坦な屋根形状です。
■メリット
・屋上が設置しやすい。
・モダンなデザインに仕上がる。
■デメリット
・排水性が悪いため、定期的に防水工事をしなければ雨漏りにつながる。
・ソーラーパネルを設置する場合、架台が必要になる。
②〇〇風〈デザインスタイル〉(建物形状と素材や色)
日本人は、食事でも和洋中何でも取り入れ、ファッションも自由で多様性を合わせ持つ国民性です。
そのためどの国よりも住宅の外観デザインも多様です。
ⅰ.和風
日本人に最も馴染みのある外観デザインで、和を重視したいと考えている方にオススメです。
自然素材などのアースカラーを使用しています。
ⅱ.和風モダン
和風デザインをベースに、現代の欧米的な生活様式も取り入れたデザインで、和風が好みでも純和風には抵抗があるという方にオススメです。
ⅲ.洋風
アーチ形のドアなどを取り入れた欧米系の外観デザインです。
壁にタイルやレンガなどを使用しています。
ⅳ.洋風モダン
洋風の伝統的な印象をすっきりとさせたシンプルな外観デザインです。
ⅴ.その他
・シンプル
・シンプルモダン
・北欧風
・南欧風
・カリフォルニア風
・ニューヨークスタイル
・ブルックリンスタイル
・ナチュラル
外観デザインがもたらす機能
デザインは、屋根形状と色と素材である程度好みのデザインに近づけることは可能です。
しかし、最も大切な事は「一生涯住む」ということを考えられた機能を兼ね備えられた外観デザインであるかどうかという事です。
それは、飽きのこないデザインであるという事と、メンテナンスを最小限に抑える工夫がされているかという事です。
➀飽きのこないデザイン
人は誰しも、好みや価値観は年数とともに変化します。
ファッションは、昨年流行したワンピースが今年はもう時代遅れとなった場合、今年の流行りのワンピースを購入し直したら良いかもしれません。
しかし、住宅はそういった流行り廃りで買い替えるというわけにはいきません。
どうしたら、飽きのこないデザインになるのでしょうか。
日本の住宅建築デザイン8原則
飽きがきにくいとされる住宅建築デザインは、「薄く」「低く」「引く」「透く」「軽く」「重く」「曖昧空間」「水平ライン」という8つで構成されています。
好みの外観デザインに飽きのきにくい要素を取り入れつつ、生涯にわたって持続するデザイン計画を考えていきましょう。
■薄く
屋根を出来るだけ薄く見せることで洗練された印象になります。
■低く
建物全体を低く見せることで、重心を下げ安定感を演出することができます。
■引く
境界線ギリギリに建てるのではなく、ゆとりを持って建てることで、圧迫感を出しません。
■透く
格子やガラスなどを上手く活用し、その先への興味を掻き立てたり圧迫感を出しません。
■軽く、重く
色や素材で、バランスよく配置することで安定感が出ます。
■曖昧空間
屋根のかかったテラスやデッキなど、内か外か分からない曖昧な空間をつくることで、ゆとりが生まれます。
■水平ライン
水平ラインを強調することで、横方向への伸びやかさを演出します。
②メンテナンスを最小限に抑える工夫
好みのデザインで新築することが出来、新築当初満足のいく外観デザインになっていることは当然で、次に考えるのは、そのデザインが長期にわたって持続するのかが重要なポイントです。
その一部の例は以下の通りです。
・劣化や汚れを防ぐ外壁や屋根の素材。
・紫外線や雨が直接当たることを抑える軒の出。
・室内に入る強い日差しを避ける軒の出や屋根をかける方角。
・屋根の折れ(山と谷)を極力抑え雨漏りの侵入を防ぐ屋根形状。
まとめ
外壁を選ぶ際は、新築当初の外観デザインだけではなく、そのデザインがもたらす機能にも目を向け生涯にわたって飽きのこないデザイン、メンテナンスを最小限に抑えた「屋根形状」「軒の出」「素材」「方角を意識した設計」等と広い視野を持って判断しましょう。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香