注文住宅なら、設計と施工を分離した方が良い住宅を創れる

どの様な住まいで暮らすのかという、住居を選択するときに、最近では、その選択肢が増えてご自身の条件に、あった暮らしを描くことができるようになってきました。

住居には、大きく分けて「集合住宅」と「戸建住宅」があり、戸建住宅では「レディーメード(既製品)住宅」と「注文住宅」に分かれます。
建主の考えを最も実現しやすいという、大きな特徴を持った「注文住宅」は、分譲住宅などの「レディーメード住宅」にはない魅力を有しています。

「注文住宅」のジャンルとみなされていますが、比較的コストを抑えた住宅では、「カスタムメイド(半既製品)住宅」である場合が、多く見受けられます。どうやら「注文住宅」にも、色々とグラディエーションがあるようです。

建主の暮らしに適した「本来の注文住宅」という意味での、「注文住宅」を実現するにはどうすればよいのでしょうか。

建主が「望む暮らしを創る設計」と「良いモノを造る施工」の分離

「餅は餅屋」という言葉がりますが、「設計」というのは、建主の暮らしや価値観を理解、共有して住宅を企画し、図面化し、企画意図を「施工」側と共有することが主な業務です。
「施工」は、設計意図を理解し、「モノ」としての良い住宅を、無駄なコストを抑えて高い品質で実現する業務です。
従って、両者は全く異なる職種ということになります。
「協力関係築きながらも、互いに緊張感を持って協働する」という関係です。
そういう意味では、両者は別会社であった方が本来は、互いの立場を鮮明化し、時には、対立し、議論することもあるでしょう。
また、知恵を出し合って補完しあうということもあるのが、プロの設計と施工のあるべき関係です。

多くの住宅会社、工務店では、この設計と施工が、同じ会社内で進められています。
社内ですからツーカーで、良いという面はありますが、相互の緊張関係は、ナーナーの緩い関係に陥る場合や、自社都合が優先されやすい環境であることも事実です。
設計も施工も両面ともプロ中のプロという会社は、滅多に存在しませんし、一般に社内組織上の力学が働き、どちらかに偏寄る傾向もあります。
総合的に考えると、注文住宅は、設計と施工を分離して進める住まいづくりの方が、良いと思います。

設計と施工が同じ会社の方が「設計料が掛からない」から、安いという話しもお聞きしますが、実際にはちゃんとした設計を行えば、設計に掛かる費用は、社内であっても発生します。
この費用を見積上、表面に出していないのか、あるいは、注文住宅の設計とは、建主の要求したことを図面に盛り込んで、確認申請を通すことと短絡理解している改ソア場合は、設計料というレベルではなく、「営業経費」的な扱いとみなし「無料」と表現していることもあります。
このレベルでは、本来の注文住宅の設計をしていませんので、設計料は無料となっているのは当然です。
この場合、問題は肝心の設計が、質的に甘くなっていることです。
建主の様々なご要求や想いを始め、建主の暮らしや価値観を理解、共有して住宅を企画し、図面化し、企画意図を「施工」側と共有するという、設計本来の機能を果たしていない場合が多いというのが、残念ながら実態だと思います。

設計と建主で、想像以上の暮らしを創る

紳士服では「ビスポーク」という、日本語では「お誂え」というオーダーメード・スーツの作り方があります。
背広/スーツの発祥の地イギリスの首都、ロンドンの名門紳士服店の、高級紳士服の作り方です。
ビスポークの語源は、「Be spoke」という、話してくださいという、お客様のこうしたい、ああしたい、という要求をお聞きするということを意味しています。

お客様の要求だけで、良い紳士服ができるのかというとそうでもないということを、あるお店で教えていただきました。
お誂えのスーツづくりは、先ず、生地選びから始まるため、来店時には、専門スタッフが、スーツを着るときの使用場面や状況を聴きながら、生地選びをサポートしてくれます。
オフィシャルな会議に出席すると言っても、どの程度重要な会議で、出席者の地位は度のクラスなのか、会議で着座している時間が長いとか、立食パーティーで使用するとかの、新調するスーツの使用目的を丹念に聴いてくれます。

そしてそれなら、こういう生地が軽くて、長時間の会議でも、疲労を抑え、しかも、皺になりにくいとか、季節に応じた生地の種類など、選択に際して、適切なアドバイスを、プロの目でサポートしてくれます。

次に私の好みを様々な角度から聴いてくれて、パリッとした感じが好きとか、やわらかい着心地が好きとか、生地の色目や柄、どのようなボディーラインが好みとか、タックの位置や裾の返しの有無から、幅、上着の前ボタンの数や、袖口ボタンのスタイルの好み、襟の幅など、細かく、聴いてくれます。
袖口のボタンは重ね合わせの7つで、上着はサイドベンツにしてもらって、カットはこうしてほしいというと、おそらく、私のリクエストしたデザインバランスが、出席する会議に、そぐわない場合などは、そのスーツへの私のリクエストがちぐはぐなのでしょう、やんわりと、こういう組み合わせのデザインではどうでしょうか、最近のエクゼクティブのデザイン傾向などの情報提供もしてくれて、私の考えを尊重しながらも、私に、このスーツを着ている仕事の場面において、成功してもらいから、このようにされてはどうでしょうかというアドバイスのように思いました。

良いスーツを売っているのではなく、このスーツを着ている方のスーツを買う目的を見通して、スーツのデザインや生地を一緒に考えてくれていることが伝わってきます。

ウールの産地やその羊の餌は、無農薬の牧草であるとか、それがこの記事のやわらかさを生んでいるとか、微に入り、細に入り、幅広く、深い知識には驚かされました。
スーツを着ているときには、上着の内ポケットに、スマホを入れるのか、それは右か左か、もし、心臓のペースメーカーは使っているなら、電磁波を遮断する生地をその部分の裏地に使いますが、とかそんなところまで配慮をしてくれるのか、と驚くくらい、このお客様のベストのスーツを創ろうとしている、プロの仕事姿勢と知識に、何度も驚かされました。
まだまだ、いっぱいあるのですが、本題からずれので、このあたりにしておきます。

さらに、もっとびっくりさせられたことがありました。
私を担当してくれた、スタッフ以外に、もう一人の年配のスタッフが、少し離れた距離から、いつもにこやかに笑みを絶やさず、つかず離れずに、ついて歩いており、時折、担当スタッフのサポートで、生地の候補を、バックヤードまで探しに行ってくれていましたが、私の接客なら、担当スタッフ一人で充分だろうになあ。暇なのかな? などと思っていましたので、ひと段落したところで、紅茶をいただきながら、一休みしていたと時に、私の担当スタッフに、あのスタッフは何をしていたのかと尋ねてみたところ、考えもしなかった答えが返ってきました。

「採寸や仮縫いを行いますが、どうしても皆さん鏡の前ですので、普段の姿勢ではなく、良い姿勢を採られます。

その状態で採寸をしても、本当に着心地の良い服は造れません」そのために、普段の自然体の姿勢や動きを観るために、もう一人のベテランスタッフが、少し離れたところから、詳細に私の姿や挙動を観察していたというのです。
その観察の結果を尋ねてところ、生地選びをしている際の、立ち居振る舞いの動きの中での私の体は、右肩上がりの、左肩下がりで、なおかつ右肩が前へ少し出ており、左の腰が上がって、右前にやや傾いている。
さらに右手と右足が左に比べて少し長く、背中から腰に掛けての筋肉もそちらに偏って付いているので、普通にしていると、無意識に、右足重心で立っていると言うのです。
その「私の体のクセ」を読み込んで、右肩周辺にわずかに、余裕を持たせたり、裁断に際しては、ごくわずか大きめにしたり、逆に絞ったりを、各部位で行うというのです。
普通はこういうことを「お客様にはお伝えしませんが」と言いつつ教えてくださいました。

その後、鏡の前に、「気をつけ」の姿勢で立っている私を、そのスタッフ2名掛で、様々な部位を採寸してくれたのですが、その際にも、会議ではどんなことをするのかとか、常に話しかけて来て、スーツを着ている私の動きを理解しようとしてくれます。
私は会議時には、よくホワイトボードに描きながら説明をする、というようなことを伝えると、採寸した寸法から、先ほどの私の体の癖を読み込んで+2mmとか、−1mmとか赤文字で、採寸票の数字に、何度も修正を加えていました、このようなスタッフの姿に、お客様の要求に応えるという以上の、スーツづくりのプロの姿に感心し、強い信頼を感じました。

もちろん出来上がった、スーツはこれまでにない着心地と、軽快さを持っており、このスーツを着ると私に自信と勇気を与えてくれる、生涯の勝負スーツになりました。
バックヤードに熟練の職人を多く持っている老舗です。
その職人のスキルを活かすため、採寸を担当してくれたスタッフは、まさに注文住宅の設計者のような機能を果たしていました。

注文住宅の設計者は、住宅の設計デザインに着手する前に、お客様の現在と将来の暮らし、さらには、価値観も共有させていただき、建主の生涯が、住まうこと自体を楽しみ、人生を楽しむ暮らしの実現のため、スーツよりも幅広い様々な暮らし、生活の場面での事柄について採寸し、設計のプロとしてご一緒に人生を楽しむ暮らしの実現をサポートして創る、幅ひろく深い仕事です。

施工についても、スーツ職人は一人の職人が手仕事で、裁断し、縫い上げて完成させますが、注文住宅の場合は最低でも20数職種の専門職が協働して造り上げていきます。
やはり注文住宅というスーツとは比較にならない金額と使用時間を考えれば、質の高い仕事が可能な、設計と施工の分離がおすすめです。

設計と工事は、分業してそれぞれの専門領域で力を発揮して、建主のよい住まいへと磨き上げることがプロの住いづくりに通じると思います。

誤解しないでいただきたいのは、設計と施工を一括している住宅会社や、工務店を否定しているわけではありませんが、折角大切な資金を使って注文住宅を計画されるなら、設計と施工を分離したプロの住いづくりも検討されてはいかがでしょうか。

注文住宅のお客様窓口機能

注文住宅のお客様窓口は、一般には営業ということになりますが、果たしてこれで良いのでしょうか。
モノを売るのではなく、建主の暮らしや価値観を理解、共有して住宅を企画し、図面化し、注文住宅という全体像を企画し、建主と共有することが、お客様窓口の主な業務です。
こう考えると、営業という職種とは、馴染まないように思えます。
お客様窓口は、本来の注文住宅設計の核心部分の機能を指していると思います。

設計と施工の分離と考えると、デザイン系のアトリエ派の設計事務所の先生を思い浮かべてしましがちです。

自身の作りたいデザインを表現されたいという先生方です。
これは「アーティスト系」の設計者であり、この系統の設計者は、「自己表現」が設計の軸ですので、お客様の暮らしを中心において考えるという、注文住宅とは相容れず、少し違うように思います。

これに対して「問題解決系」の設計者は、様々な要素、要因を勘案して、取りまとめて行く、広い意味での注文住宅系の設計者です。
この系統の設計者は、「問題解決」が設計の軸ですので、総合的な判断ができますので、注文住宅の設計者に向いていると思います。
もちろん高い設計デザイン能力や、暮らしに関する専門知識が必要であることは言うまでもありません。

まとめ

住宅業界で〇〇LDKという考えが生まれて72年。
もはや、この考え方のプランが、令和時代に通用することは無いというのが現実です。
仮住まいの賃貸住宅ならまだしも、生涯に亘って60~80年間を過ごす住宅です。
しかも、その生涯時間の7割を過ごすのが住宅です。
そこで暮らす建主の暮らしの器としての住宅は、家族の成長にリンクし、住まわれる方々の価値観に基づいて、設計されるべきです。
ハウジングラボは、建築設計と暮らしコーディネートという「Architecture Design & Life Coordinate」視点で、お客様に向き合うことが、住まいづくりには、最も重要だと考えています。
外観デザイン、プラン空間/インテリアコーディネート、仕様設備部材、温熱環境/耐震性能などの住宅性能と、それをもたらす構造/工法、暮らしやすさ、などを、建主が気づいておられない部分も含めて、建主ご家族の暮らしを中心に置いて進めます。
その住まいづくりのプロセス自体も楽しんでいただきたいと思っています。

住まいづくりでは、お客様個々の、従来の暮らしを超えたKurashinnovation(暮らしの革新)を実現し、住宅内で過ごす暮らし時間の質(Quality of Time)を高めます。
建主にとって、最適で快適な住まいづくりを、ハウジングラボは追究し、ご満足をいただける住まいづくりを目指しています。

ハウジングラボの住いづくりは、お客様が実現したいという想いはもちろん、住まいづくりのスタート段階では気づいておられなかった、ご自身とご家族の、心豊かな楽しい暮らし視点で、基本設計/デザインをまとめ上げます。
その設計内容を、確かな施工技術力を有する、建築工事請負企業とのコラボで、責任施工するという合理的な仕組みを構築しています。
ハウジングラボでは、別部門で住宅会社、工務店のコンサルを行っていますので、プロを指導するプロの目で、地元の大阪・京都・神戸を始め、全国各地域の優れた施工能力を有する企業とのネットワークがあります。
Zoomなどのオンラインも駆使して、全国で住まいづくりを進めています。
注文住宅で新築をお考えなら、是非お気軽にご相談ください。

株式会社ハウジングラボ
代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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