注文住宅づくりは、令和の暮らしへの革新が必要

先ず、これから住まいづくりを始めようとされる方への注意喚起です。
一般的な4LDKプランは、1952年に、その始祖鳥的存在の、2DKプランの公団住宅が生まれてから、既に72年になろうとしています。
当時は、夫のみが働き、妻は専業主婦、子ども2人という「標準家庭」をモデルに考えられたプランです。
それは素晴らしく良くできたプランで、そのインパクトも大きかったのも事実です。
しかし、下図のグラフ(厚生労働省)のように、1980年から、2019年までの、39年間で共働き世帯は2倍に増えています。
逆に専業主婦世帯は半減しています。

このことだけを捉えてみても、暮らしが大きく変わってしまっていることは確かです。
料理を作る人は必ずしも、主婦だけというわけではなく、主夫も作る時代ですし、夫婦で楽しみながら作る場合など、様々な組み合わせがあり、キッチンもそれに伴って様々な機能や形態が変化してきています。

また、スマホやタブレットという、パーソナル端末機器とWIFIの普及で、違う角度から住宅の在り方が問い直されています。
リビングに大型テレビというのが、「常識」で、現在の新築住宅でも普通に設置していますが、実際の暮らしの中では、家族各自が携帯端末で好きなメディアを選択して、それぞれが様々に楽しんでいます。

48才の父親の横で17才の娘が、彼氏とLINEをしているなどという生活は、固定電話での通話時代とは様変わりで、リビングに家族が集まってはいるが、それぞれの世界に、繋がっているか、それぞれの世界に浸ってしまっているという、「家族内の孤独な関係」が現出しています。

それがいいのか、悪いのかではなく、これから家を建てようとされている方、ご自身は、夫婦、親子、兄弟、家族全体としてどのような関係性を作っていくのかということも考える必要があると思います。

いきなり考えろと言われても、「ハイ、分かりました。私たちはこうしたいです」とは思いつかないものです。

従来の暮らし方、親世代の住居内で、幼少期から育って来られた以上、旧来の暮らし方が、無意識の中で浸み込んでいますので、「あたり前化」してしまってもいます。
この過去の暮らしを意識せずに、「こんなものだ」と受容れてしまい、この家は自分の暮らしにそぐわないのかなという、違和感も多少はありながらも「普通に過ごしてしまっている」のかもしれません。

しかし、このままでは、これから新築される方は生涯住まう家ですから、60~70年位の時間を過ごすという視点で、その間の暮らしが、「住まうこと自体を楽しみ、人生を楽しむ場」として考える必要があります。

人生の7割以上の時間を過ごすのが、住宅内なのですから。

注文住宅は「暮らし視点で考える」と分かりやすい

集合住宅は、建売住宅では、「建物に合わせて暮らす」スタイルです。
業者側も、賃貸の集合住宅では、入居率を高めたいとか、建売分譲住宅や、分譲マンションでは、早く売ってしまいたいというビジネス上の事情から、幅広く受け入れられそうな、プランから抜け出せません。
どうしても過去の「売れた」プランを、踏襲するのは止むを得ないというところだと思います。
また、人間という生き物は、環境に適応してしまう生き物ですので、多少の不便さを感じながらも、その住まいに「馴染んで」しまいます。
そこそこのプランなら、住めるか住めないかと言えば、「住める」ということです。

「住める」ということと、「生涯心豊かに楽しく住まう」という視点、つまり、自宅内で過ごす「時間の質」を高めるという視点で考えると、次元が異なります。
本来注文住宅は、個々の住人の住居内で過ごす「時間の質」を如何に高いものにするのか、ということが目的ということです。
この視点で考えて行きましょう。

前提として、4LDKというプランを全否定しているわけではなく、現在の暮らし(あるいはこれから先の暮らし)とそぐわなくなってきている部分が、目立ち始めたので、改良しようというのが基本姿勢です。
一方で、改良では間に合わない部分には、革新が必要になってきます。
この内容は、個々のお住まいになられる方々の「暮らし方」「趣味趣向」「価値観」といった「個性」によって大きく異なってきます。

個々の住まわれる方々の暮らしを中心に、先ずは大きく捉えて考えて行きましょう。

そもそも「暮らし」とはどういう意味なのか

「暮らし」という言葉は、日常よく使われる言葉ですが、当たり前に使い過ぎて「暮らし」とは、どういうことを意味するのか、ちょっと考えると、ぼんやりとして、曖昧なままに使われているようです。

「暮らし」を要素別に分解してみると

  1. 住宅内の「場」と
  2. そこで行う「コト」と
  3. 一緒にそのコト行う「人」または、その場の周辺にいる「人たち(登場人物)」

の3つに分解されます。

つまり、朝のあわただしい時間の中で、朝食を作るという、暮らしの場面を例に考えれば、キッチンという「場」で、朝食を作るという「コト」を、夫婦「人」で、子どもたち(登場人物)も、多少は手伝いながら作っている状態を、その家族の、朝の「暮らし」の一部と定義することができます。
このように「暮らし」を要素別に3つに分解して、考えると暮らしの実態が具体的に見えてきます。

家族のコミュニケーションという視点

これから家を建てる方々の家族構成も様々だと思いますが、少しわかりやすくするために、新築時には未だお子様のいらっしゃらない、若いご夫婦A様の、住宅内でのコミュニケーションという視点で、考えてみましょう。

A様ご夫婦は、職場も違いますが、お二人とも平日の帰宅時間は概ね18:30頃。
帰宅途中にLINEで夕食の相談をし、駅前のスーパーで食材の不足分をどちらか、少し早く帰宅できそうな方が、買って帰るというのが夕食準備のいつものお二人の習慣です。

帰宅後は、夫婦でビールか、ワインを飲みながら、それぞれの職場であったことを愉快に話します。
夕食の準備を手分けして進めますので、キッチン前では、二人の立つ場所を、入れ替わり、後ろを通る場面もあるで、食器棚との間の通路を、大柄なご主人にも配慮して1.2mほど間隔を空けるよう設計し、移動する場合でも、コミュニケーションと調理の手は、止まることのない様に配慮しています。
これにより心豊かな、楽しい、夫婦の時間を生み出すことに成功しています。

時が経ち、お子様が生まれて、上のお子様(男の子)が6才、下のお子様(女の子)が4才になったとしましょう。
職場からの帰宅途中に奥様が、保育園に立ち寄って二人のお子様をピックアップしてご帰宅。
ご主人は夕食の食材を買って帰ってきます。
帰宅後は新婚時代から続く、習慣の夫婦での夕食づくりと、その日にあったことを、夫婦で楽しくおしゃべりをしていると、お子様たち2人も、もちろんその場に加わって、保育園での楽しかったエピソードを、喜んで話し出すという、自然な形で家族のコミュニケーションがはじまります。
そうしたご家族の成長と伴に変化する、コミュニケーションスタイルを予測して、360°どこからでもお子様が、ご両親の立つキッチンへ自由にアクセスできるアイランド型キッチンを計画します。

やがてお子様方は、自分でも食事を作りたがることになり、ご夫婦の得意料理を、お子様へ徐々に伝えていくことにもなるでしょう。
やがて、お子様方が思春期を迎えて親に反発して、距離を置こうとする一時期でも、クラブ活動や友人と遊んで帰宅したときに、先に帰宅していた奥様が、お子様の夕食を温めてあげるなど、食事を一緒に用意しながら、学校での出来事や、クラブ活動のことなどをポツリ、ポツリ、と話し始めて、やがて笑顔が広がるでしょう。
人は、何かをしながら、話すのが最も話しやすい環境とも言われていますので、家族のコミュニケーション視点で家族の成長過程とご家族の生活スタイルを配慮した、プランで構成されたキッチンは、お子様のこうした、成長過程を上手に乗り切るためにも、コミュニケーションの場として有効に機能します。

さらに時が経過し、やがてお子様も独立され、お孫さんも生まれ、そのお孫さんが、中学生、高校生、大学生と成長されて、おじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに来た際も、お孫さんに、おじいちゃん、おばあちゃんの得意料理を一緒に作りながら、学校の話や、お友達の話をするのは楽しいでしょう。
3代に亘って、楽しみながら、コミュニケーションができ、家庭の味を、伝承することにもつながります。
微笑ましくも、楽しい食事の準備と食卓になると思います。

A様のお宅の、キッチンという場が、時を超えて、家族のコミュニケーションの場になって行きます。

これから先の家族のコミュニケーションの場として、キッチンを活用するという事例です。

この事例に比べて、昭和の時代は、リビングのTVを中心に、家族で一緒に見ているTV番組の話題が、家族のコミュニケーションを生み出していましたから、リビングが家族のコミュニケーション中心でした。
現在は、共働き、特に奥様がフルタイムで働いているという家庭が増え、男女という概念の境界も曖昧になり、男女の分け隔てなく、食事を作ったり、家事をこなしたりという社会的背景もあり、楽しい会話を中心とした、食事を作るという家族の触れ合い場としてのキッチンへ、家族のコミュニケーションの中心が移行してきています。

キッチンは家事労働の場ではなくなり、「楽しい暮らしの新たな中心」として、家族が最もコミュニケーションを取りやすい場へと、進化しつつあります。

キッチンとリビングの役割と形態の変化が進行

キッチンでもこのように現在の暮らしに則して考えると、その機能が「調理」を中心とした「収納」と「動線」から、「コミュニケーション機能」中心のキッチンへ、その位置づけが進化し、キッチンスペースのレイアウトも変化しています。

家族が集まる中心であったリビングでは、どうなっているのでしょうか。
大型TVの要求は、今でも強いものの、家族が同じ番組を見ているという場面は少なくなり、観ていたとしても、地上波TVやBS TVではなく、個人の趣向性の強いYoutubeやTver、NETFLIXなど異なるメディアからの配信を、各人が個別端末(スマホやタブレット)で、観るなど、その位置づけと端末のパーソナル化が進んでいます。
つまりTVという求心力が失われ、各人の個の世界とLINEなどでつながっているか、自身の関心のあるメディアに入り込んでいるというのが現状です。
リビングという同じ場所にいるがバラバラに個がいるという状態で寛いでいいます。
ちょうどホテルのラウンジのように、繋がりのない人が寛いでいるという近い形態だと思います。
しかし、他人が交差するホテルと違って、家族が主役として暮らすのが住宅です。新たな家族向けの「ラウンジ」が求められています。

まとめ

気づかぬうちに大きく変化した「令和の暮らし」へ、住宅のメイン空間である「キッチン」と「リビング」の、革新が必要です。
革新と言うと実生活からかけ離れた、「飛んだプラン」をイメージしがちですが、実際にはその逆で、戦後から連綿と72年間も続く、当たり前になってしまったLDKプランが、現在の暮らしにそぐわなくなってきたというのが実態ですので、現在の暮らしによりフィットさせるために「革新」するというのが正しいと思います。
賃貸の集合住宅や貸家は一時的な住まいと割り切れば、LDKプランに、ご自身の「暮らしを合わせる」ことで生活することはできます。

30才で家を建てて100才まで、これから建築する家で暮らすとするなら「70年間に亘って、住まうこと自体を楽しみ、人生を楽しむ暮らし」を実現すべきだと思います。
今が最適から、70年先も暮らしを楽しめるそういう住まいづくりが、本来の「注文住宅づくり」です。

ハウジングラボは、「暮らしを研究する」という意味の「Housing Laboratory=住宅研究所」を略して、「Housing Labo」と名付け、25年前に設立しました。
「暮らし」×「イノベーション」で、住宅内で過ごす、暮らし「時間の質(Quality of Time)」を高めるために、既成概念にとらわれることなくKurashinnovation.で、一人一人に最適な、そして自然に家族のコミュニケーションが生まれる暮らしの革新を目指しています。
暮らしの楽しさや、心の豊かさを生み出すプラン/空間を用意しています。
「KITCHEN」と「Communication」組み合わせた「KITCHENication」というキッチンの革新、「リビング」から「家族用の新たなラウンジ」への暮らし革新についても、個々の暮らしの「時間の質」を高めるためには躊躇しません。

新婚のお二人から、3~5人家族の暮らしはもちろん、最近では、個人の人生観の多様化が進む中で、一人暮らし、2人暮らしというライフスタイルも多くなってきました。
多くの方々は、仮住まいとしての賃貸集合住宅に住まわれていまが、既成のプランに暮らしを合わせて、住まう住居では、「生涯暮らす住まい」としては不充分な状態で、日々を過ごされています。
従前の価値観や慣習に縛られることなく、Kurashinnovation.でQuality of Timeを創る視点と発想が必要だと思います。
「暮らし」×「イノベーション」は、突飛な発想ではなく「必然の発想」で考えますので、新たなライフスタイルを、お考えの方も、お気軽にご相談ください。

〈構法/工法の選択について〉

「異次元の快適性と空間デザイン」を求める方には、RC(鉄筋コンクリート)外断熱住宅をおすすめします。
また、「よりきめ細かなプラン/空間構成」を求める方には、木造プレウォール工法の住宅をおすすめします。
適切な工法の選択についてもお気軽にご相談ください。

株式会社ハウジングラボ
代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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