その和室って本当に必要ですか? ~固定概念を捨てた家づくり~
2022/04/11
「とりあえず、和室を作っておけば、なにかと便利そうだから…」で、和室作っていませんか?
少なくとも畳部分4.5帖+収納1.5帖=6帖の面積を使うことになる和室。
畳の種類によっても異なりますが、6帖(3坪)の和室の金額は、200~300万円になる事がほとんどです。
本当に、必要な理由がある場合はもちろん和室は設けるべきですが、「とりあえず…」で決めてしまって良い金額ではありませんので、和室を設ける目的をしっかり考えましょう。
その使い方、和室である意味ありますか?
お子様を遊ばせたり、お昼寝させたり、洗濯物の室内干しをしたり、両親が泊まりに来た時に使えたり、将来の夫婦の寝室にしたり、将来両親と同居することになった場合に使えたり…と、確かになにかとあれば便利そうに感じます。
しかし、その用途は、本当に和室である意味があるのでしょうか。
用途別に適した空間づくり
和室は、座卓を置けばリビング、布団を出せば寝室…と、様々な用途に使えるとても便利な空間です。
しかし、それは部屋数が少なかった昔の家の話で、現代の住宅にはリビングも寝室も存在しており、便利そうだからといって何にでも使えるような空間は、逆に中途半端な空間になり使いにくいという事態にも成り兼ねません。
お子様を遊ばせる空間
お子様は力加減無しにおもちゃの車を走らせたり、おもちゃを投げたり、大人が予想出来ない動きをするため、畳が傷んでしまうということは良くあります。
また、飲み物をこぼしシミにすることも多々あります。
これらの対策として、傷みにくい畳や拭けばシミになりにくい畳などの商品も出ていますが、そこまでして畳に拘る必要があるのか、それとも、フローリングやタイル、カーペットなど好みの素材や手入れが楽な素材にするという和室ではなくキッズコーナーという選択肢も合わせて検討しましょう。
更に、お子様が遊ぶ空間というのはおもちゃの収納も合わせて考える必要があります。
和室の押入の下段をおもちゃの収納で使用していますが、奥行きが長く、棚数も少ないため収納しにくいことが原因で、置き型の収納を畳部分に置き結局空間を狭くさせているケースをよく見受けます。
これこそ、多用途に使えるという固定概念が邪魔をした使いにくい原因を作っている1つです。
お子様をお昼寝させる空間
お子様をお昼寝させる空間として、押し入れに子供用の掛け布団を収納しておけば便利ですが、幼児期はベビーベッドやバウンサー、クッションなど様々な快適にお昼寝するアイテムが出ており、畳に直接寝るということは少ないと思います。
少年期になってくると、平日は保育園で休日はお出掛け…と、家の中でお昼寝する回数は何回あるのでしょうか。
結局のところソファでお昼寝していることや、和室に寝かせるにしても子ども用の敷布団を敷いたりしているので、畳である必要性はあるのでしょうか。
室内干し空間
共働きの方や雨の日の室内干し空間として、和室の天井に物干し竿をかけられるようにしていたり、置き型の物干しを使って洗濯物を干していたり、ふすまの鴨居(扉の枠)に引っ掛けている方をよく目にします。
普段過ごしているリビングやキッチンから見える場所にいつも洗濯物が干されているのは、いかがなものでしょうか。
来客時の宿泊部屋
ご両親や友人が来て泊まる時のために…の回数は、年に何回あるのでしょうか。
年に数回の来客のための住まいづくりなのでしょうか。
お子様が小さい間は、子ども部屋に布団を敷いて寝てもらったり、その1日くらい夫婦の寝室に寝てもらって夫婦は子ども部屋やリビングで寝たり、近所のホテルに数万円で泊まってもらった方がコスパも良く、よっぽどゆっくり出来るのではないでしょうか。
将来の夫婦の寝室
家の15段程度の階段の上り下りが大変になるということは、車いすや寝たきりという状態の可能性が高いので、畳の上に布団を敷いてというよりは、介護用のベッドなどを使っているか施設に入っていると考えられるため、そもそも和室である意味はあるのでしょうか。
単純に階段の上り下りがしんどくなった時の事を考えると、逆に足腰の事を考えると家の15段程度の階段の上り下りくらいの運動はしておいた方が良いでしょう。
ご両親から、「年をとってからの階段の上り下りは大変だ」と聞かされていたという方もいらっしゃいますが、今は建築基準法で階段の蹴上の高さと踏面の長さが定められており、手すりを付ける事も義務となっている為、昔の家程大変ではなくなっているのです。
将来両親との同居
両親のどちらかが1人になってしまった時に同居するかもしれないと言われる方もおられますが、その時になってみないと分からないタラレバのために設けるべきなのでしょうか。
仮に、同居することになった場合、年配の方は物が多いと言われ、4.5~6帖の和室では到底生活出来ないでしょう。
同居の必要が出てきた時には、お子様が巣立っていて空き部屋になっている子供部屋が使える可能性もありますし、その時に増築をするという選択肢もあります。
季節別用途
冬はリビングではなく和室にこたつを置きたいと言われる方もおられますが、家族全員が和室のこたつに集まった場合、使わないリビングは何のためにあるのでしょうか。
冬は和室で夏はリビングという贅沢な使い方をするのであれば、畳リビングにして年中集まるリビングにした方が良いのではないでしょうか。
まとめ
資金が有り余っていて、いくらでも部屋を作れるのであれば別です。
年に数回や中途半端で使いにくい空間のために200~300万円支払うべきなのか冷静に考えてみましょう。
お子様がおもちゃを広げて遊ぶ期間は10年前後、お昼寝期間は5年前後、来客時の宿泊部屋は数回…。
室内物干し部屋や将来の寝室、タラレバである両親の同居を考えても中途半端な空間は逆に使いにくいという事です。
つまり、60年という長い年月を過ごす住宅は、目先の事だけでなく60年間を見据えた、用途に合わせた素材選びや空間づくりをしなければ何をするにも中途半端で使いにくい部屋になってしまうという事です。
今や法事なども家でする家庭は少なく、時代とともに生活様式は変わっています。
本当に必要な理由がある方は和室を設けるべきですが、固定概念を捨てて、本当に必要なのか考えてみてください。
必要のない空間を削ったことで、長く過ごすリビングを広くすることに資金を回す事が出来たり、使いやすい室内物干し場や収納を設けることが可能になります。
同じ200~300万円を使うのであれば、本当に必要な空間に投資をして、心豊かな暮らしを送ってください。
ご希望の方は、当研究所にご相談ください。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香