良い住まいづくりにはプロとの共同作業が大切
2022/04/13
自分の住まいは自分でいろいろ指示を出して決めたいというお客様もいらっしゃると思います。
一方で面倒だからプロに一切合切任せてしまいたいとお考えの方のいらっしゃると思います。
このあたりのバランスはなかなか難しいところだと思います。
建築デザインからインテリアデザイン、設備部材の選定など住まいづくりは、多岐にわたります。
もちろんご予算との関連はありますのでご自身の希望を言い出すときりがありません。
そこでどのようにしてベストな住まいづくりを進めればよいのかという一つの方法としプロとの共同作業の上手な進め方を考えてみましょう。
お客様主体に進める領域とプロが主体で進める領域
住宅は暮らしの器です。
どのような器にするのかを決めるには、どのような暮らしをしたいのかという視点でご自身が考えてみる必要があります。
しかしこれは結構難しい問いかけです。
漠としていてすぐに答えられません。
そこで「自身からの距離」で分けて考えてみるとこの難問に答えられそうです。
例えばダイニングで食事をする際の自分の椅子を起点に考えてみましょう。
最初の「自身からの距離」は「手元の範囲」です。
一番近い距離です。
料理ごとの食器やカトラリー、調味料入れやコップ、ゴブレット、ランチョンマットなどせっかく新しい住いでの暮らしが始まるのですからお気に入りのモノをそろえたいですね。
「手元の範囲」は直接住宅とは関係ないようですがお客様の日常、非日常の暮らしのシーンですからご自身が中心となって各アイテム販売ショップのアドバイスも参考に楽しんでまとめてください。
「手の届く範囲」からはプロを上手に活用しましょう
ダイニングの自分の席から振り返って調味料や追加のお皿を取るなどと言う具体的な場合に「手の届く範囲」は具体的なシーンを伝えてどうすればよいのかプロの意見を参考にした方が良いと思います。
ダイニングテーブル上の照明器具もそうです。
料理がおいしく見える照明の色温度、食事前の子供たちの勉強などの適した色温度などTPOに合わせて調色調光のできる照明器具などのアドバイスもプロにお願いしましょう。
このように主体は「自分たち家族」ですがそこのプロの意見を参考にして取り入れることでより豊かな暮らしのシーンが手に入ります。
※参照記事 「良いダイニングをつくるためのポイント3選 https://housing-labo.casa/category/plan-design/post-646/」
「目の届く範囲」はイメージを伝えてプロにたたき台を提示してもらいましょう
先ほどのダイニングの自身の椅子から見える範囲の「インテリア空間」のイメージを画像などでプロと共有化します。
「目の届く範囲」というのはそれなりに範囲が広いためプロの原案提示を受けてそれを起点にご自身とご家族の意見を述べて修正を図っていきましょう。
「目も届かない範囲」はプロにアイディアを出して貰いましょう
床下収納や、壁のニッチ収納、天井裏収納など「手も目も届かない範囲」はプロの知識に期待しましょう。
ただ余計なモノを設置するのでは無く、「実現したいコト」を具体的に要求するようにしましょう。
また、将来のことも考慮してもらいたいと5年後、10年後と先々までの「時間軸で未来の範囲」もプロの意見を参考にしましょう。
良い住まいづくりを進めるプロセス
住宅会社/工務店は「完成した家」を引き渡してなんぼのビジネスです。
従って完成までのプロセスを最短で進めようとします。
もちろんその方がコストもかからずの合理的ともいえますが、「壁のクロスの品番を決める」という作業の前に「どういう暮らしをするからこういうようなイメージの部屋にしたい」というそこでのお客様の暮らしを理解し共有化しようとしてくれてこそ住まいづくりのプロです。
現実的にはそうしたプロセスはそんなに時間を取る話でもなく、むしろ作業途中で変更なども少なくなるので良いプロセスなのですが中々ご理解されない住宅会社/工務店も多くあるのも事実です。
主導権はお客様にありますからきちんと対応してもらいましょう。
予算コントロールとプロの分業
住まいづくりのプロセスが進むといつの間にかオプションだらけとなって思いのほか追加資金が必要になるという場合があります。
営業にどこまでの範囲が工事請負契約金額に含まれており、ここから先はオプションということを常にコントロールしてもらうようにしましょう。
設計が確認申請を提出する前までにプラン変更や主な仕様は決定しておきたいのでいつまでに、どこまでを決定しなければならないのか日程を明示してもらいましょう。
仕様についてはインテリアコーディネーター(IC)と打ち合わせをしますが家具、カーテンなどについては対応可能なのかも確認しておきましょう。
つまりプロの分業がどのようになっているのか確認をしておくとプロの使い方も見えてきます。
モノを決めるのを楽しむ
いつまでにこれを決めてくださいとか、せかされる場面があるかと思いますが、事前に着工までのスケジュールで自身の意思決定が必要な部分を事前に抜き出してスケジュール化してもらいましょう。
気持ちにゆとりを持って完成した後の暮らしをイメージしながらモノ選びを楽しんでください。
まとめ
「手元の範囲」「手の届く範囲」「目の届く範囲」「手も目も届かない範囲」という区分で各部屋単位に「実現したいコト」のためにこういう使い方をするのでと、ご自身の言葉でプロ側へ伝えて、プロの力を有効に引き出しましょう。
「こういうコトがしたいからこういうモノを選ぶ」という視点でも住まいづくりそのものを楽しんでください。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士