家族の暮らしにとって良い土地を選ぶ
2022/02/23
住宅建築用地を求める際に一般的に良い土地というのは「南向きで間口が広く」というコトになり、お子様の学区、実家との距離などの要望が加わって「この条件をクリア」してなおかつ「予算は出来るだけ抑えて」となるようです。
住宅建設用地に家を建てて生涯ここに住まわれるのは「あなた」です。
「あなたとご家族」にとって本当に良い土地の選びというのは「初期に思っていたこの土地」ではないときが良くあります。
「生涯に亘って住まうという時間の長さ」で考えた場合の土地選定の条件は「今を中心に考えた場合」と異なってきます。
どういう考え方で進めればよいのか検討してみたいと思います。
土地の条件だけで選ばないのが住宅建築用地の選び方
優れた設計者は「与条件が厳しいほど知恵を出す」のが常です。
日当たりが悪いからと言って諦めない、敷地形状が悪いからと言って諦めない、敷地面積が小さく物理的にコンパクトな家だが「広さ感」を諦めないなど「知恵と工夫」で良い住環境を最大限に創り出そうとします。
注文住宅は「敷地特性を活かす」&「弱点をカバーする」設計で進める住まいづくりです。
土地を購入する前に設計者とどの土地を選択するかについて相談することをお勧めします。
これから半世紀以上に亘って過ごす住まいの土地を考える
新婚時代から子育て期を経てその家族は完成期を迎えます。
その後夫婦の暮らしを楽しみながらもそれぞれが「持っている世界を楽しむ」という人生の時々の暮らしを楽しむための住まいづくりという視点で土地選択を考えます。
住まいづくりは「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」が目的ですから。
短期的な視点の条件で土地選択をするということを避け、生涯という時間軸で考えて総合的に判断をするようにしましょう。
子育て期の実家の近さや小学校区はやはり気になります
女性の社会進出が進み夫婦共働きが常識化した現在、保育所への送り迎えやお子様の急な発熱などご両親様のサポートを受けられるというは大きなメリットの一つです。
また、その学区の小学校の評判も大いに気になります。
土地選びをこのような「子供の小学校時代」という一時期の視点で考えて決断されている場合が多く、住まいづくり全体を客観的に見ると「失敗への道」を選択されてしまっている例は多々あります。
ご自身が考えておられる土地選択の条件、懸念されている内容を整理して総合的に判断するという冷静さが土地選択には必要です。
希望の土地が出ないからと住まいづくりを先送り?
住いづくりは思い立った時が建て時です。
また、希望の土地が出ないから先送りするというのはほとんどの場合で不正解です。
人気のエリアは価格も高く、購入可能金額で土地を探すと敷地は狭く形状も良くない土地しかないというはよくある話です。
住宅に掛ける費用を削り建築費を抑えて土地代に充てるということあります。
「家族が幸せになる住まいづくり」という住宅を建てる目的がいつの間にか「希望のエリアに土地を買う事が目的」となってしまい住まいづくりは失敗の方向へ傾き始めます。
また、「このエリアでもいつか良い土地がでるのではないか」という考え方は捨てた方が良いでしょう。
偶然の「出物の土地」を期待しながら何年も住まいづくりを先送りされる方々もいらっしゃいますが「家族が幸せになる住まい」を手に入れられないまま先送りするメリットはありません。
「ご自身が実現したいコト」を中心に住まいづくりを考える
「希望のエリアに土地を買いたい」という想いが強い場合、不動産業者や住宅会社の営業から「そのエリアでは難しいのでもっとエリアを拡大してもらえませんか」と言われると「カチン」とくるのはとてもよくわかります。
土地だけで考えると確かににその通りです。
土地建物でそしてこれから先の半世紀以上にもなる生涯という時間で「家族が幸せになる住まいづくり」という住宅を建てる目的に立ち返って考えてみましょう。
その際に最も重要なことは「新しい住いで実現したいコト」です。
この実現したいコトを中心に土地の条件が厳しくても建物である程度カバー可能な範囲について設計者のアドバイスをもらいながら「土地」を探すという視点を持ちましょう。
「実現したい暮らしのコト」といきなり言われても・・・
住宅を建てるということは「建物と土地」を買うという購買行動ですが実際に手に入れたのは「暮らし」です。
「暮らし」というよく耳にもするし話もしますが、具体的に目に見えないのが「暮らし」です。
「住宅のどの場所でどんなことをするのか。
登場人物は誰なのか」と考えると「暮らし」が具体的に見えてきます。
例えばキッチンで休日に夫婦でワインを飲みながら食事を作って晴れていたらテラスで昼食をとりたい。
子供が生まれたらみんなで料理を作ってワイワイ食事したい。
子供が巣立って時間に余裕が出来たら夫婦で川へ鮎を釣りに行き、子供たち家族も呼んで一緒に鮎パーティを楽しみたいとかの具体的な「幸せな楽しい時間」の中身のことです。
「妥協ではなく」この土地なら「幸せな暮らしが実現できる」のかが判断ポイント
土地選びを「妥協ではなく」人生という長い時間スパンで、建築側でカバーできることも含め、さらに社会インフラやリソースを利用しての対応を含めて何が自身と家族の暮らしにとって最適解かという視点で土地を選択していただきたいと思いまます。
「結果としては最初には考えてもいなかったエリアの土地でした」が「自分たちの幸せな住まいづくりに最適な選択をしたと思います」とおっしゃっている幸せな方も多くいらっしゃいます。
土地選びはこれから先の暮らしを俯瞰して総合的に判断してください。
まとめ
「土地選択は幸せな住まいづくりの一つの要素」であって全てではありません。
建築側でかなりの部分はカバーすることもできます。
また、土地を求めるエリアの選択は今後の暮らしをある程度見通しながら長期な視点で総合的に判断をしてください。
住まいづくりの目的は「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」ですから。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士