メンテナンスフリー住宅は存在しないってホント?
2021/11/15

最近よく「メンテナンスフリー」という言葉をよく耳にします。
住宅の中でも特に屋根や外壁というのは、「雨・台風・地震・紫外線」様々な外的要因により影響を受けます。
本当に、メンテナンスが全く必要ないというのはあるのでしょうか。
メンテナンスフリーというのは、他の屋根材や外壁材よりも比較的メンテナンスが少ないということで、完全にメンテナンスがいらないという事ではありません。
目先の言葉や金額で判断するのではなく、総合的な視点で判断しましょう。
外的要因

住宅と同じ条件で外的要因を受けている車は、窓のワックスを定期的に塗ったり、ワイパーのゴムを数年で交換したり、何らかのメンテナンスを繰り返し乗り続けます。
しかし住宅は、車の窓のワックスやワイパーのゴムのように数千円~数万円では、外壁の塗装や屋根材の交換は出来ません。
外部のメンテナンス必要部位
住宅の外部でメンテナンスを要する多くは、シーリングやコーキングと言われる材料と材料の継ぎ目の部分や住宅に付随するデッキ等で、材料自体はかなり高耐久になってきています。
しかし、その中でも今回は、各部位のメインとなる材料にはどのような種類があるのか、材料自体のイニシャルコストと耐用年数、メンテナンス頻度は異なるのかということに絞って比較したいと思います。
➀屋根

ⅰ.粘土瓦(陶器瓦/いぶし瓦)
粘土を焼いて作る瓦素材。
■イニシャルコスト:約9,000~12,000円/㎡
■イニシャルコスト:約9,000~12,000円/㎡
■耐用年数:50年以上
■メンテナンス頻度:20~30年
ⅱ.セメント・コンクリート瓦(モニエル瓦)
セメントやコンクリートを材料にして作る瓦素材。
■イニシャルコスト:約6,000~8,000円/㎡
■対応年数:30~40年程度
■メンテナンス頻度:10~15年
ⅲ.化粧スレート(人工スレート/コロニアル/カラーベスト)
セメントなどを材料として作る板状の屋根材。
■イニシャルコスト:約4,500~8,000円/㎡
■対応年数:20~25年程度
■メンテナンス頻度:7~8年
ⅳ.天然スレート
岩石を材料とした薄い板状の屋根材。
■イニシャルコスト:約10,000円/㎡以上
■対応年数:20年以上
ⅴ.トタン
亜鉛でメッキ加工した薄い鉄板素材。
■イニシャルコスト:約5,000~6,000円/㎡
■対応年数:10~20年程度
■メンテナンス頻度:10~15年
ⅵ.ガルバリウム鋼板
アルミニウムと亜鉛、シリコンによってメッキ加工された鋼板素材。
■イニシャルコスト:約6,000~9,000円/㎡
■対応年数:30年程度
■メンテナンス頻度:20~30年
ⅶ.銅板
銅製の板を屋根に張り付けたもの。
■イニシャルコスト:約20,000円/㎡以上
■対応年数:60年以上
ⅷ.アスファルトシングル
ガラス繊維にアスファルトを染み込ませ、表面に石を吹き付けたシート状の屋根材。
■イニシャルコスト:約5,000~6,000円/㎡
■対応年数:20~30年程度
■メンテナンス頻度:20~30年
※2021年5月19日更新データ

②外壁

ⅰ.窯業系サイディング
セメント質と繊維質などの原料を板状に形成した外壁。
■イニシャルコスト:約3,500~5,000円/㎡
■耐用年数:25年程度
■メンテナンス頻度:7~8年
ⅱ.金属系サイディング
金属板を成型・加工して柄付けし、断熱材で裏打ちした外壁材。
表面の金属板には、溶融亜鉛メッキ鋼板・ガルバリウム鋼板・アルミニウム合金・ステンレス鋼板などが使用され、金属板の種類によって耐久性やコストに大きな差があります。
■イニシャルコスト:約4,000~6,000円/㎡
■耐用年数:30年程度
■メンテナンス頻度:10~15年
ⅲ.樹脂系サイディング
塩化ビニル樹脂が使用された、かなり軽量化されたサイディング。
■イニシャルコスト:約7,000~9,000円/㎡
■耐用年数:30年程度
■メンテナンス頻度:10~20年
ⅳ.木質系サイディング
素材に無垢の木材を使用したサイディング。
■イニシャルコスト:約6,000~8,000円/㎡
■耐用年数:10年程度
■メンテナンス頻度:7~10年
ⅴ.モルタル
砂とセメントと水を混ぜ合わせた材料。
■イニシャルコスト:約1,500~4,000円/㎡
■耐用年数:30年
■メンテナンス頻度:5~10年
ⅵ.タイル
粘土を主成分とした原料を板状にして焼き固めた外壁。
■イニシャルコスト:約7,000~9,000円/㎡
■耐用年数:40年程度
■メンテナンス頻度:10~15年
ⅶ.ALC
ケイ酸質、石灰質、アルミニウム粉末を主原料とし、高温高圧で蒸気養生された軽量気泡コンクリートパネル。
■イニシャルコスト:約7,000~15,000円/㎡
■耐用年数:60年程度
■メンテナンス頻度:10~15年
※2021年10月14日更新データ

③その他
ⅰ.シーリング/コーキング
ⅱ.雨樋
ⅲ.防水塗装 etc
まとめ
ここでは、外的要因を受けやすい「屋根材」と「外壁材」を中心に記載しましたが、メンテナンスが全く必要ない材料は存在しません。
材料によって、耐用年数やメンテナンス頻度は大きく異なりますが、そこにはイニシャルコストにも大きな差があるということや材料に付随する部分のメンテナンスが必要になる事もあるという事を理解しておく必要があります。
住宅というのは約10万個の部品から出来ています。
そのような多くの部品/部材から出来ている住宅がメンテナンスフリーというのは難しいでしょう。
住宅というのは、手遅れになる前に、手を加えながら大切に使うことで、長く使い続ける事が出来ます。
目先の「メンテナンスフリー」という言葉に惑わされることなく、イニシャルコストと耐用年数のバランスを考えながら採用し、住み始めると定期的にメンテナンスを行いながら上手く付き合っていくことをオススメします。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香