土地のポテンシャルを最大限に活かした住まいづくり

ご両親から土地をいただけた方や、親族や知人から土地安く譲ってもらったという方の、土地のポテンシャルを最大限に活かす住まいづくりの方法をご紹介させていただきます。

土地の周辺環境を確認する

実家の隣だと、「お姑さんがいる…。」「畑として使われていた土地って、本当に大丈夫…?」「タダとはいえ、余った土地で全然良い土地ではない…。」「ゴミ捨て場が隣で最悪…。」と、既に持っておられる土地に対して、良い印象をもっておられない方をよく目にします。
逆に、「嫁姑問題は無関係なくらい仲が良いので気にしていない」「南側が開けているのでとても良い土地」と、あまり深く考えておられない方も少なくありません。
土地に住むわけではなく、あくまで土地は住宅を建てるための土台ではありますが、失敗しても建て替えることは出来ませんし移動させることは不可能です。
土地の周辺環境をしっかり確認し、ポテンシャルをしっかり活かすポイントと気をつけなければいけないポイントを抑えて、土地と建物合わせた後悔しない総合的な視点を持った住まいづくりを行いましょう。

事前確認ポイント

土地のポテンシャルを活かすためには、まず事前に4つのポイントを確認しておくことが重要です。

➀方角

まずは、東西南北に道路や隣家、母屋等、どこに何があるのか確認します。

:実は、子ども様が大きくなってきて塾や部活動で夕食も家族が揃うことが少なくなり、家族が揃うのは「平日の朝だけ」や「週末の午前中だけ」というご家族は少なくありません。南側の日当たりだけを意識するのではなく、東側の日当たりも上手く活用した住まいづくりを行いましょう。

西:西側は西日が強く嫌がられることが多いですが、断熱材や紫外線カットの窓を上手く活用することで、季節によっては、冬場冷え性の方に好まれる空間を作ることも可能です。固定概念で西側を避けるのではなく、最新の材料を活用して西日さえも活かす住まいづくりにしましょう。

:南は日当たりが良いということから、家族が1番長くいるリビングやダイニング/キッチンを配置することが多い方角です。
しかし、くつろぐためのリビングが日が入りすぎて眩しくテレビが見えにくくなったり、道を歩いている人や実家のご両親からの目線が気になってくつろげないといったことになるケースも多々見受けられます。 どこでどんな体勢でどんなコトをするのか、どのように光を取り込むのかを考えた住まいづくりを心がけましょう。

:北側は、日が入ってこないため水廻りや収納などを取られるケースも多いですが、実は太陽の光は東から南、南から西へと動くため、東と南と西は太陽の光は安定しませんが、唯一北側は常に安定した光が入ってくるという、くつろぎや読書、勉強をするにはとても適した空間なのです。
また、花や植物は太陽の光を求めるため、南側を向く傾向があります。花や植物の1番良いところを見るためには北側の庭もオススメです。
北側の空間を活かした住宅はとても快適な空間となりますので是非参考にしてみてください。

②隣家との関係性

隣家の窓や出入り口の位置、ゴミの仮置き場やトイレの位置を確認します。
階段や廊下、寝室等は、窓の外をぼーっと眺める時間は少ない可能性が高いですが、リビングやキッチン、ダイニング等、長く滞在する部屋の窓が自身の土地に面している場合、隣家の方の視線が気になり、せっかく窓を設けてもカーテンを閉めっ放しになったというケースも少なくありません。
また、隣家が母屋で、その中でもご主人側のご両親の隣に建てるという場合は特に、嫁姑問題がありますので、仲が良い場合でも永続的に仲良く過ごすために、以下の3点に注意して計画しましょう。
・リビング等のくつろぐ空間や、家事の内容(洗濯場やキッチン等)がいつでも覗かれてしまわない配置にする。
・玄関の出入りの様子がいつでも気づかれてしまう配置は避ける。
・母屋との関わり方、庭や勝手口の配置等は奥様の意見を尊重する。

③借景/光/風の取り込み

桜並木や田んぼ、海や川、山や丘等、敷地の周りにある借景は最大限に活かし、どこでどんな事をしながら眺めたいのかを考え取り込みましょう。
隣地の建物が高層マンションや2~3階建てでも敷地が密接している等、季節に分けてどのくらい光や風が取り込めるのかを気象庁のデータ等を用いて把握しましょう。

④土地にかかる費用

いくらタダで手に入れた土地とは言え、元々住宅用地ではない土地の場合、土を入れ替えたり、コンクリートを壊したり、土を足したり、擁壁を作ったりと、思いのほか土地にかかる費用が膨大になるケースもあり、「考えていた建物の規模やグレードを落とさなくてはいけなくなった」というケースも少なくありません。
住宅が建てられる土地にするためにかかる費用は、事前に見積依頼し、建物以外にかかる費用を把握したうえで住まいづくりの計画を始めましょう。

まとめ

街を歩いていると、方角を無視して建てている住宅や、せっかくの借景に背を向けて建てている住宅を思いのほかよく目にします。
家庭という字は、「家」と「庭」と書いて「家庭」です。
良い家庭を築くには外部空間をうまく取り込むと、家の中はより良い空間になります。
また、土地だけを見て、良くない土地だと判断するのは早いです。
その土地を生かすも殺すも、土地と建物を合わせた総合的な視点を持った住まいづくりが出来るかにかかっています。
また、あなたの先祖から受け継がれた大切な土地や、あなたが必死に働いて手に入れた大切な土地のポテンシャルを最大限に活かそうと、土地を大切に扱ってくれる住宅会社に相談する事をオススメします。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香

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