住宅にかかるお金のお話②
2026/06/25
得られる価値とそれに伴う金額

前回のコラムでは、「住宅価格は高い・安いだけでは判断できない」というお話をしました。
住宅は金額だけを比較する商品ではなく、その住まいでどのような暮らしが実現できるのかという「価値」まで含めて考えることが大切です。
では実際に、住まいの種類によって、得られる価値にはどのような違いがあるのでしょうか。住宅には、中古住宅、新築の建売住宅、規格住宅、注文住宅など、さまざまな選択肢があります。
もちろん価格も異なりますが、それ以上に大きく違うのは、「実現できる暮らし」です。
例えば、同じ3,000万円の住宅でも、
- 自分たちの暮らしを住宅に合わせる住まい
- 住宅を自分たちの暮らしに合わせる住まい
では、その60年間の満足度は大きく変わるかもしれません。
だからこそ、今回は価格ではなく、「その住宅を選ぶことで、どのような価値を得られるのか」という視点から、それぞれの住宅を比較してみたいと思います。
中古住宅という選択

近年は空き家の増加もあり、中古住宅を購入する方が増えています。
価格を抑えられることが大きな魅力ですが、「中古住宅は安いからお得」と考えるのは少し早いかもしれません。
中古住宅は、購入後にどこまで手を加えるかによって、総額も、住み心地も大きく変わるからです。
中古住宅への工事は、大きく分けると「リフォーム」と「リノベーション」があります。
リフォームとは、経年劣化した部分を元の状態に近づける工事です。
例えば、外壁塗装やキッチン・お風呂などの設備交換がこれに当たります。
一方、リノベーションは、住まいの価値そのものを高める工事です。
間取りを変更したり、耐震性能や断熱性能を向上させたり、現在の暮らしに合わせて住まいを生まれ変わらせます。
つまり、中古住宅は「物件価格」だけでは比較できません。
購入価格に加え、どこまで性能を向上させる必要があるのかまで含めて考える必要があります。
中古住宅のメリット
中古住宅最大の魅力は、購入価格を抑えられる可能性があることです。
また、新築では予算が届かない人気エリアでも、中古住宅であれば購入できるケースがあります。
さらに、建物の状態によっては、必要な部分だけをリフォームすることで、自分たちの暮らしに合わせた住まいに近づけることもできます。
中古住宅のデメリット
日本の住宅は、これまで約30年で建て替えられてきたと言われています。
これは30年で住めなくなるという意味ではありません。
しかし、築年数が古い住宅の中には、現在の耐震基準を満たしていなかったり、断熱・気密性能が十分ではなかったりする住宅も少なくありません。
平均寿命が延び、「人生100年時代」と言われる今、30代で住宅を購入される方は、これから60年以上その家で暮らす可能性があります。
年齢を重ねるほど、家の性能は暮らしや健康に大きく影響します。
冬の寒さや夏の暑さを我慢し続けること。
地震への不安を抱えながら暮らすこと。
それらは、毎日の積み重ねとして家族の暮らしに影響していきます。
また、リノベーションによって間取りを変更できるとはいえ、構造上取り除けない柱や壁もあります。
「もっとこうしたかった」という制約が残るケースも少なくありません。
中古住宅を選ぶ際は、価格だけでなく、
「これから60年間、安心して快適に暮らせる住まいになるか」という視点で判断することが大切です。
実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか
それでは、中古住宅を購入し、リフォーム・リノベーションを行った場合の総支払額を見てみましょう。
《計算条件》
・30歳で購入
・35年住宅ローン
・ボーナス払いなし
・金利1%
① 2,000万円で中古住宅を購入し、小規模リフォーム(500~1,000万円程度)を行った場合
借入金額:約2,500万円~3,000万円
月々返済:約7万~8万5千円
総支払額:約3,000万円~3,600万円
② 2,000万円で中古住宅を購入し、大規模リノベーション(1,000~2,000万円程度)を行った場合
借入金額:約3,000万円~4,000万円
月々返済:約8万5千円~11万5千円
総支払額:約3,600万円~4,800万円
さらに、
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 将来的な修繕費
なども必要になります。
中古住宅は、購入価格だけを見ると「安い」と感じるかもしれません。
しかし、安心して長く暮らせる性能まで含めて考えると、想像していたほど新築住宅との差がないケースも少なくありません。
だからこそ比較すべきなのは、
「中古住宅はいくらで買えるか」ではなく、「快適に暮らせる住まいになるまで、いくらかかるのか」。
価格だけでは見えない価値まで考えて比較することが、後悔しない住まい選びにつながります。
新築住宅(建売住宅・規格住宅・注文住宅)という選択

ここまで、中古住宅についてご紹介してきました。
では、新築住宅はどうでしょうか。
新築住宅と聞くと一つの住宅の種類のように感じますが、実は大きく分けると、
- 建売住宅
- 規格住宅
- 注文住宅
の3つに分類されます。
どれも「新築住宅」であることに変わりはありませんが、価格だけでなく、住まいづくりの考え方や得られる価値には大きな違いがあります。
建売住宅という選択
建売住宅の最大の魅力は、完成した建物を実際に見てから購入できることです。
注文住宅のように、「完成してみたらイメージと違った」という心配が少なく、土地と建物をまとめて購入できるため、資金計画も立てやすくなります。
また、人気エリアの分譲地などで販売されることが多く、同世代のご家族が集まりやすいことも魅力の一つでしょう。
一方で、建売住宅は、購入する人が決まる前に計画される住宅です。
そのため、多くの方が暮らしやすいように設計されています。
これは決して悪いことではありません。
しかし、「自分たち家族だけの暮らし」に合わせて設計されているわけではないということです。
例えば、
料理が趣味で広いキッチンが欲しい方。
休日はリビングいっぱいにプラレールを広げて子どもと遊びたい方。
キャンプ用品や釣り道具、自転車など趣味の収納がたくさん必要な方。
そうしたご家族にとっては、「あと少しこうだったら」という小さな不満が積み重なることもあります。
つまり建売住宅は、
「暮らしを住まいに合わせる住宅」と言えるかもしれません。
規格住宅という選択
規格住宅は、建売住宅よりも少し自由度が高い住宅です。
あらかじめ用意された複数のプランの中から、自分たちに合った間取りやデザイン、設備などを選択していきます。
大量生産によるコストメリットを活かせるため、注文住宅より価格を抑えられるケースもあります。
「建売住宅では少し物足りないけれど、注文住宅ほど自由でなくてもいい。」
そんな方には魅力的な選択肢です。
ただし、基本となる間取りや考え方は、多くの方に合うようにつくられています。
つまり、
「自分たちの暮らしに近い住まいを選ぶ住宅」と言えるでしょう。
注文住宅という選択
注文住宅は、「自由設計」が魅力だと言われます。
しかし、本当の魅力は自由設計そのものではありません。
家族の暮らしに合わせて住まいをつくれること。
それが注文住宅の最大の価値です。
例えば、同じリビングでも、
家族で映画を楽しむ時間を大切にしたいご家族。
読書をしながらゆったり過ごしたいご夫婦。
友人を招いてホームパーティーを楽しみたい方。
お子様が自然とリビングに集まり、勉強や会話が生まれる空間をつくりたいご家族。
求める暮らしは、人それぞれ違います。
だからこそ、本来の注文住宅は、
「LDKは何帖必要ですか?」「和室は必要ですか?」
という質問から始まるものではありません。
まず考えるべきなのは、
「どんな毎日を送りたいですか?」ということです。
その答えが見えて初めて、
必要な広さも、必要な収納も、必要な部屋数も、
自然と決まってきます。
しかし残念ながら、「注文住宅」と言いながら、部屋数や広さだけを聞いて設計が始まるケースも少なくありません。
それでは、規格住宅と大きな違いはありません。
本当の注文住宅とは、
家を設計することではなく、暮らしを設計すること。
私たちは、そのように考えています。
実際にはどのくらいの費用になるのでしょうか
では、新築住宅ではどの程度の費用になるのでしょうか。
ここでは建売住宅や規格住宅、一般的な注文住宅も含めた参考金額をご紹介します。
《計算条件》
・30歳で購入
・35年住宅ローン
・ボーナス払いなし
・金利1%
① 3,000万円の住宅(土地費用込み)
借入金額:3,000万円
月々返済:約8万5千円
総支払額:約3,600万円
② 5,000万円の住宅(土地費用込み)
借入金額:5,000万円
月々返済:約14万円
総支払額:約5,900万円
③ 7,000万円の住宅(土地費用込み)
借入金額:7,000万円
月々返済:約20万円
総支払額:約8,400万円
このほか、
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 将来的なメンテナンス費用
なども必要になります。
ただし、ここで考えていただきたいのは、
「価格差」と「暮らしの差」は比例しない
ということです。
例えば500万円の差があったとしても、
毎日の家事が楽になり、家族との時間が増え、趣味を楽しめ、
何十年も快適に暮らせるのであれば、
その500万円は「高かった」と言えるでしょうか。
逆に、価格だけを優先して住み始めたものの、
「収納が足りない」「家事がしづらい」「冬は寒く、夏は暑い」
そんな小さな不満を何十年も抱え続けるのであれば、本当に安い買い物だったのでしょうか。
住宅は、毎日の暮らしを支える場所です。
だからこそ、価格だけではなく、そこでどんな時間を過ごせるのかまで考えて選ぶことが大切です。
まとめ
ここまで、賃貸住宅、中古住宅、新築住宅について、それぞれの特徴や費用をご紹介してきました。
もちろん、どの住まいにもメリットがあります。
価格を優先したい方もいれば、立地を優先したい方もいます。
大切なのは、「どの住宅が一番良いか」ではありません。
「自分たち家族にとって、どの住まいが最も価値のある選択なのか」です。
一生という長い時間で考えると、それぞれの住宅にかかる総費用は、想像しているほど大きく変わらないケースも少なくありません。
だからこそ比較するべきなのは、住宅価格だけではなく、その住まいでどのような毎日を送り、どのような人生を積み重ねていけるのかという「暮らしの価値」です。
住宅は、人生で最も長い時間を過ごす場所です。
何気ない朝食の時間も、子どもの成長も、夫婦でくつろぐ夜も、そのすべてが住まいの中で積み重なっていきます。
価格だけを比べれば、安い住宅はたくさんあるかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、
「その住まいが、あなたやご家族の人生をより豊かにしてくれるかどうか。」
住宅を選ぶときには、ぜひ「価格」だけではなく、「これから何十年も続く暮らし」という視点でも考えてみてください。
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