木造軸組改良構法+プレウォール・パネル工法

木造住宅は最も日本人が慣れ親しんできた住宅です。日本に本格的な木造建築が伝わったのは、596年の飛鳥寺建立ですから1400年以上も前になります。その後、気候風土になじむように、日本人らしく、改良に改良を重ねて、独自の木造住宅技術が発展してきました。特に1970年代後半から、断熱気密技術が普及し始め、年間を通して、快適な生活へと日本の木造住宅は進化を始めました。また、地震、台風などの災害大国日本では、特に耐震性能などが強化され、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震を経て、耐震技術も進化してきました。特に近年では、地球温暖化の影響で、夏は猛暑と豪雨、冬は寒冷化と局地的な大雪など、極端な自然環境へ移行しつつあります。一方、近年の地震の発生状況から、日本列島は地震多発期に入り、繰り返し巨大地震が発生することが予想されています。より一層の技術進化も求められています。

こうした環境下にあって、木造軸組改良構法(ドリフトピン結合)とプレウォール・パネル工法を組みあわせて創る住宅は、最も進化した木造住宅の一つです。

長く住まえる住宅へ

日本の歴史上、最も長く庶民に使用された住居形態は「竪穴式住居」です。約16,000年間もの長い年月に亘って使用され続けた住居形態です。建築技術が未発達であった事もありますが、自然災害が多い日本列島にあっては、住居は仮設的な発想が、竪穴式住居に見られるように多分にあったと思います。その後、豊富な森林資源を活かした木造建築が普及しますが、人口が密集していた江戸(当時世界最大都市)では、大火災という新たな災害にも、度々悩まされました。何度建ててもすぐに、燃えてしまうからと、住宅は簡便でも良いというやや仮設的な考え方と木造建築は対になって、日本人に定着して行ったようです。もちろん、都市部の商家の防火壁としての梲(うだつ)や、蔵のような耐火構造の木造建築技術も存在しましたが、庶民には手の届かない高価な構造でした。第二次世界大戦の戦災で420万戸も焼失した住居の再建にも、先ず簡便な木造住宅からというように、「住宅は作っては壊す」という、「スクラップandビルド」するものという目で、一般の方々に住宅は見られていたようにも思います。

「スクラップandビルド」の考えでは資源の無駄使い、大量のCO₂と廃棄物の発生、自然破壊など様々な観点から問題提起されるようになって、人々の意識も変化してきました。ようやく最近になって、永く使える木造住宅が求められる時代になりました。

木造住宅の利点と課題

木造住宅の良さは、比較的コストが抑えられるとか、増改築が容易というような、多くの利点を持っています。自然素材である木という素材に、慣れ親しんできた日本人には、愛着もあります。

一方、従来いくつかの欠点も指摘されてきました。確かに何も対処しなければ問題となる欠点を、木という建築資材の素性に関わる部分として抱えていました。木造建築技術は、著しく進歩し、実際にはこうした欠点は、技術的には、確実に対処できるようになっています。しかし、永年の木に対する「負のイメージ」をひきずって、未だにこれを払拭できていないというのも事実です。

〈木造住宅の誤解されている欠点イメージ〉

  • 湿潤な日本の気候では、木は腐るというイメージ。
  • 適切な防水処理、壁内結露対策などの湿気対策技術は確立され、対処できるようになっています。
  • 白アリに構造体がダメージを受けやすいというイメージ。
  • 適切な防蟻処理技術は確立され、対処できるようになっています。
  • 火災に弱いというイメージ。
  • 被覆技術や、外壁、内装の防火/耐火性能の向上で対処できるようになっています。

このベーシックな、木材に対する負のイメージを払拭するには、確かな技術で建築された数多くの木造住宅で耐久性が実証されていますが、染みついた負のイメージを払拭し、木造住宅の新たなイメージが定着するまでにはもう少し時間が必要なようです。

安全安心で快適な木造住宅技術へ進化

木造住宅の、「腐る」「シロアリ」「火に弱い」という3大負のイメージは、もはや技術的には完全に払拭されています。また、木造住宅の「安全安心と快適」については、確かな技術を有している企業であれば、コストさえ掛ければ、国が定める最高等級を獲得することも、木造住宅でも、もちろん可能です。「安心安全」分野の基準は、主として「耐震性能」、快適性という分野の基準は主として「温熱環境性能」です。

木造住宅の安全安心(耐震性能)と快適性(温熱環境性能)の進歩は目を見張るものがあります。

特に、温熱環境性能は、断熱気密性能の技術が導入され始めた1970年代後半から、しばらくは、ヒートショックという健康上の問題回避を含む、建築主とその家族の快適性の追求とエネルギーコストの節約が主なテーマでした。2015年に国連サミットでSDGsという持続的開発目標という視点が採択されてからは特に、「スクラップandビルド」という考え方は、資源の無駄遣い、地球環境破壊などと相反する方向性とみなされるようになり、住宅も、より長い期間に亘って、使えるようにと、住宅の長寿命化が意識されるようになってきました。さらに地球温暖化という問題も加わって、温熱環境性能をより高めるという方向へ、動いています(2022年10月から温熱環境等級5~7を追加)。

「新築時の性能」から「長期間の性能維持」へ

ここで注意していただきたいのは、耐震性能も、温熱環境性能も、「新築時の性能」であるということです。住宅を建設されて、その家に住まう建築主とそのご家族は、「新築時点から始まる暮らし」という「長い時間」を手にしたとも言えます。人生100年時代と考えれば、30才で家を建てれば約70年間続く暮らしです。次の世代が住み続ければトータルで100年、その次の世代までも住み続けるなら、130年か、それ以上の時間を継続して住み続けるということになります。SDGS的な視点で考えれば、これからの住宅はそれだけの時間に耐えられる耐久性能が必要になってきます。

木造住宅の寿命は一体何年なのでしょうか?

よく引き合いに出されるのは、世界最古として現存する木造建築物として有名な法隆寺です。1300年以上の時間が経過しても健在ということです。木は切り出した時から、徐々に、細胞の高分子鎖が経年変化で切れて強度を失う一方で、結晶化して強度を増すので、そのバランスから、最大強度になるのは伐採後約200年後、その後1000年程度かけて徐々に強度が落ちて、創建から1200~1300年後に伐採時の強度に戻るとされています。法隆寺の現在の構造材は、新築時の強度程度ということになります。もちろんこの期間には、木材の問題点とされた水によって一部腐った部分は補修し、シロアリや火災からも人々のたゆまぬ努力で、免れてきました。素晴らしい木の能力でもあり、木の特性を理解して建築した職人たちと、守り続けてきた人々のおかげ現存しているとも言えます。

法隆寺は、木造建築の素晴らしい耐久性を示していますが、住宅ではありません。つまり、そこに人は暮らしておらず、法隆寺の場合は、建物が無事であれば「耐久性は充分」ということになりますが、住宅の場合は、建築主とその家族が生涯住み続け、さらに次世代、さらにその次の世代へと、SDGs思想で受け継ぐとするなら、「モノが持てばよい」というレベルではなく、「安全安心」で「快適に暮らせる」ということが求められます。「繰り返しの地震にも耐える耐震性能、制震性能」「繰り返しの地震を含む、経年変化に強く断熱気密性能が落ちにくい温熱環境性能」という、「新築時の性能を出来るだけ維持できる」ことが、これからの住宅には求められる耐久性能です。

また一方で、法隆寺のように大きな天然石(地球の歴史並みの時間の耐久性を有する)を礎石として建設された建築物と、現代の建物のように、地震対策として、鉄筋コンクリートの基礎に必ず緊結することという規制が存在するという、根本的に異なる要素があります。上部構造体の木造部分が、いくら長寿命であっても、下部構造体の基礎の鉄筋コンクリートの中性化速度が建物の寿命(現実的には100年程度は持つ)を決定してしまうからです。もちろんメンテナンスや補修を行って、中性化を遅らせれば、130年程度であれば持つだろう言われています。

いずれにしても、これからの住宅は「新築時の性能」という評価から、一歩先を行く本来の住宅性能、「長期間の性能維持」という「耐久性能」を有した住宅が求められます。

木造軸組改良構法+プレウォール・パネル工法

在来木造軸組工法は、歴史があり、経験値に基づいており、十分に実績を積み重ねてきた構造ですから、良い構造躯体と言えます。しかし、高いレベルで要求される安定した耐震性能を発揮するには、木という「自然素材」のバラツキによる不安定要素が拭えません。こうした無垢の構造材を使用する場合は、そうしたバラツキを見越して安全係数をかけて、余裕をみていますが、バラツキはバラツキです。また、経年変化で反り、曲がり、ひねり等の変形が、生じることが懸念されますので、さらにバラツキの−部分が拡がるという不安要素が存在します。

木造軸組改良構法(集成材/ドリフトピン結合)

このような在来木造軸組構法の問題点の解消を図るため、ハウジングラボでは、木造軸組改良構法として、先ず、使用する木材は、JAS認定工場で生産された、品質が安定している集成材のみを柱梁材に使用しています。

さらに、在来木造軸組工法の接合部分という「軸組木造」のもう一つの弱点を解決するために、「ドリフトピン結合」を採用して、柱梁を接合しています。伝統的な手刻みで行われていた接合部の「仕口」は、現在では、一部の工務店では行われていますが、仕口加工の大半は、精度の高いプレカット機械で、精密な加工がおこなわれ、高精度に組み立てられています。しかし、プレカットで精度は上がっても接合部の断面欠損が大きいことに、大きな差はなく、接合部の強度に不安が残ります。従って、接合部の強度を圧倒的に強くすることができ、断面欠損も無視できる程度のドリフトピン結合を採用しています。これによって躯体の堅牢性と経年変化による狂いを極力抑えています。

プレウォール・パネル工法

集成材とドリフトピン結合によって構成される、安定した木造軸組改良構法に、プレウォール・パネル工法を組み合わせています。

1、耐震性能

構造用合板などの構造用面材を柱梁の外側から釘で打ち付ける一般的なモノコック構造では、最初の地震発生時には十分強度を保つのですが、繰り返し地震が発生すると、構造用合板から釘が抜け行くという問題を払拭できません。

車のエアバッグなら一回の事故から身を守ることが出来れば、それでよいのですが、地震のタイプによっては、熊本地震のように、本震よりも大きな、余震が襲うなど短期間に大きな地震が繰り返すタイプの地震もあります。また、長期間に亘って住まわれる住宅においては、何度も地震に見舞われることも想定されます。この繰り返しの地震に対しても、機能し、確実に建物と生命財産を守れるようにする耐震思想に基づいた、躯体システムが必要です。そこで柱間に、構造用合板をはめ込むタイプのプレウォール・パネルを採用することで、繰返しの地震に強い躯体システムを構成しています。この柱間に、はめ込まれたプレウォール・パネルの構造用合板が、地震発生時に、四周の柱・梁・土台(胴差・桁)に突っ張って、地震力を伝え、最終的には基礎を通して確実に地盤面に地震力を逃がす構造です。地震力の逃げ場は、プレウォール・パネルの構造用合板が四周の柱・梁・土台(胴差・桁)から、地盤面へというルートしかないという構造構成です。地震入力時に最も力を受ける構造用合板を、釘で、外側からとめるだけでは、外側へ向かう力に抵抗する力は、釘の引き抜き力だけに頼っているため、ここが弱点となって、地震力で構造用合板が外側へ膨らもうとして、外側へ向いたときに、その力を逃がそうという力が働き、地震力に抗しきれず、釘が抜けるか、緩むことによって、建物本体の損傷につながる危険性があります。1枚1枚の構造用合板が、外れることなく長期間機能する、ファイルセーフ機能を持ったはめ込み型で、地震力を建物全体で受け止めて、主要構造材へ確実に伝えて最終的に地盤へ逃がすという機能を長期間に亘って保有することができる、繰り返しの地震にも強いタイプのモノコック構造としています。

さらに、建物への地震力の入力自体を抑える目的で、制振装置を組み込み、地震力を減衰させて、耐震性能に、ゆとりを持たせています。

地震力は、様々な方向から、建物へ力が加わります。特に、阪神淡路大震災時のように、衝撃的に突き上げる、大きな縦揺れという引き抜き力が、建物に掛かると瞬時に、柱が抜けたり、梁や桁が外れたりという事態が生じた場合には、建物が重大な損傷を受けることになります。こうした事態を回避するために、引抜力に対して圧倒的に強いドリフトピン接合を採用してこれを防いでいます。

2、断熱気密性能

プレウォール・パネル内の断熱材は、高性能なポリフェノール系の断熱材「ネオマフォーム」を採用しています。

冬季の寒さに対しての断熱性能が高いのはもちろん、一般的な断熱材が夏季の猛暑時に性能を落とすのに比べ、高い性能を発揮する断熱材です。高性能な断熱材のため他の断熱材に比べて、厚みを抑えることができるというメリットがあり、壁内のスペースが生まれ、コンセントやスイッチのボックスを、断熱気密を損なうことなく、どこにでも自由に設置できます。また、プランによっては、フォールダウン金物という柱と土台、基礎を緊結する部材を取り付ける必要がある場合でも、適切な位置に取り付けることができる自由度を確保し、安全性を高めています。

木造軸組改良構法で、経年に対しての狂いを最小に抑える集成材とドリフトピン接合の採用、繰り返しの地震力に強い、プレウォール・パネル工法との組み合わせによって、高い気密性能と断熱性能を、長期間に亘って確保することを可能にしています。

長期間に亘って断熱気密性能を維持しようとすると、繰り返しの地震に対しても、高い耐震性能を有していることから、建物に狂いが生じることがなく、気密性能と断熱性能の維持を可能にしています。

安心安全で快適な住宅を長期に亘って提供できる木造住宅の実現には、木造軸組改良構法(集成材/ドリフトピン結合)とプレウォール・パネル工法を組みあわせて創る躯体システムがポイントです。

まとめ

ハウジングラボでは、「RC外断熱構法」と「木造軸組改良構法+プレウォール・パネル工法」の2種の構法で住まいづくりを進めています。「RC外断熱構法」は、スーパーと言っても良いほどの「異次元の快適性」と、数値だけではない「全身で感じる安心感」、「独創的なデザイン自由度」という、ずば抜けた性能/機能を持っていますが、

1、コストが掛かり金額は高い。

2、地耐力等によっては、建物重量が重いだけに建設に不向きな敷地もある。

という欠点も持っています。

これに対して「木造軸組改良構法+プレウォール・パネル工法」は、

  • コストは一般木造住宅と大差ない。
  • 建物重量が軽く、地盤改良などに掛かるコストは一般木造住宅と同じ。
  • 北海道を除くエリアで実現可能な住宅。
  • 工期も一般木造住宅と同じ(多少パネル化した分だけ短い)。

とRC外断熱構法の「超」がつく性能を手には出来ないものの、十二分以上の「優」がいくつも得られる、バランスの取れた躯体システムです。

家を建ててから、生涯を終えるまでの時間の7割を過ごす住宅について、考えるときには「消費」ではなく、これからの心豊かな暮らしを実現するための「人生に対する投資」と考えるのが基本です。

そうは言っても投資可能な金額には限りがありますので、この2つの工法の採用については、ハウジングラボにご相談の上、ご検討ください。「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」のために、ご不明な点は何なりとお気軽にご相談ください。

株式会社ハウジングラボ

代表取締役 一級建築士 松尾俊朗

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