~住宅にはいくらかけるべきなのか~「住宅金額の相場」を徹底追及
2021/10/18

人生で最も高額な買い物…それが「住宅」です。
そのため、一生で1回の買い物となる方がほとんどです。買いなれた日用品や食料品は、「この量でこの金額は高い」や「この質でこの金額なら安い」など、購入する物の金額の基準があると思いますが、初めて購入する物の場合、高いや安いということをどのように判断すれば良いのでしょうか。
ご自身にとっての最適住宅価格を考えてみましょう。
住宅にかける金額の相場は存在しない
ご両親が住宅を建築する際の住宅価格や、先に家を建てた友人や同僚の住宅価格を参考にする方は少なくありません。
しかし、ご両親が高級な輸入車に乗っているということを車の車種や価格を決めたり、友人がファストファッションを購入しているからと言って自身の洋服の価格を決める方は少ないと思います。
それは、人ぞれぞれ収入や価値観による予算の配分が異なるからです。
1、住宅金額を決める前にご家族の価値観を整理する
人は、人生の7割を住宅の中で過ごしていると言われています。
そのため、人の価値観が最も出やすい場所が家の中と言っても過言ではありません。
その価値観の違いによって費用のかけ方は大きく異なり、ご自身の住宅最適価格の算出に大きく左右します。
住宅会社や住宅予算、購入土地を考える前にまずは、ご自身のご家族それぞれの価値観を整理するところから始めましょう。
価値観を整理する事で見えて来る、ご家族がどこに費用のウェイトをかけるのかの事例を挙げて考えてみましょう。
➀キッチン
「料理が好きでキッチンで楽しみながら料理をしたい」という方と「食べていくためにキッチンは必要」という方ではキッチンへの費用のかけ方が異なります。
②お風呂
「お風呂は烏の行水」という方と「1日の疲れを取るためにお風呂にはゆっくりと浸かりたい」という方ではお風呂への費用のかけ方が異なります。
③収納


「物が捨てられない」という方と「必要最低限の物しか持たない」という方では、収納に必要な面積は異なります。
④子ども

子どもが何人で、その子どもの性格は明るくて元気なのか、おとなしいのか、教育方針はどのように考えているのかによって子供部屋の作り方やリビングの作り方は異なります。
2、時間軸で考える

洋服は1~3シーズン。家電や車は数年~10年程度。モノによって使用する期間や年数は異なります。
では、住宅はどのくらい使用するのでしょうか。
住宅は「消費」ではなく将来への「投資」
人生100年時代となった今、25歳で家をたてた場合最長75年。35歳で家を建てた場合最長65年。
65歳で家を建てた場合でも最長35年住宅に住まうことになります。
それほど長く使用する住宅を消費物と同じように目先の事だけを考えて購入すると、後々後悔することも少なくありません。
長期に亘って持続する住宅性能
日本は、地震大国であり最近は異常気象という住宅にとって、かなり過酷な環境です。
30年後定年退職を迎えた頃に住宅性能が機能しておらず建て替えなければいけないということになったり、80歳を迎えて体力が弱り始めた頃に断熱気密性能が機能しておらず、夏は暑く冬は寒いといった体に負担のかかる住宅の中で過ごさなければいけなくなったりという問題が起こらないよう長期に亘って持続する住宅性能を考えた住まいづくりをする必要があります。
可変性のある間取り計画
子どもが学生時代、子どもの手が離れた時、子どもが結婚して孫を連れてくる年代等、家族は様々な形に変化します。
未来の家族のあり方は誰にも予想は出来ませんが、ある程度イメージしそれに応じた可変性を持った住宅にしておく必要があります。
目先の事や、将来の事だけを考えるのではなく、段階に分けて対応できる住まいづくりを考えましょう。
3、最大お支払い可能額を知る
住宅にかける資金は無限にあるわけではりません。
逆に住宅費用の節約をし過ぎて後悔するようなことがあるというのもあってはいけません。
その時に、まずは、ご自身のご家族の生涯に亘っての財布の中身を知ることが重要です。
生涯に亘って使う住宅にかける場合の資金は「借入可能額」と「お支払い可能額」2つの方法で算出します。
➀借入可能額
ⅰ.ご主人様のご年収〇〇万円+奥様のご年収〇〇万円=世帯収入〇〇万円
ⅱ.世帯収入〇〇万円×7~9倍 ※職業や年齢によって異なります。
②お支払い可能額
ⅰ.1ヶ月の家賃〇〇万円+駐車場代〇〇万円+1ヶ月の貯金額〇〇万円=毎月の給与額―生活費〇〇万円
ⅱ.ⅰで算出された数字で、月々の支払い可能額として支払い年数や金利で住宅ローン計算を行います。
※住宅ローン計算は住宅会社へ依頼してください。
③最大お支払い可能額
➀と②の小さい方の金額に自己資金やご両親からの援助費用などを足した金額がご家族にとっての最大お支払い可能額です。
まとめ
一生に1回の1番大きな買い物である住宅には、「価値観」「住まう年数や家族構成」「最大お支払い可能額」という3点がお客様ご家族によって異なるということから住宅の額の相場はありません。
誰もが初めての住まいづくりで不安に思うのは当然です。
「現在」から「未来」に亘って後悔しない住宅のための金額を考えた住まいづくりをしましょう。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香