何を基準に住宅会社/工務店を選択すればよいのか

自動車を購入する場合、メーカーの数は国内では指折り数えるくらいの数の中から選ぶことになりますし、そのほとんどがグローバル企業で国際的にも高く評価されたMade in Japanの高い品質を持っていますから、どのメーカーを選んでも大きく失敗することはありません。

それに比べて住宅は全国大手の巨大企業から大工さんまで、日本では住宅建築を手掛ける会社/個人は様々あります。
一体何を基準にどのようなところを選べばよいのでしょうか。

最新の住まいは「3つの軸」を基準に選びましょう

「お客様にとって良い住宅」を「3つの軸」で考えてみると分かりやすくなります。

1、「安全/安心/快適」
2、「生活利便性」
3、「心豊かな暮らし」

先ず、「安全/安心/快適」の軸は住宅というモノの「性能」のことですが基本的に住居が備えるべき最低限度の性能は建築基準法で定められており建築確認申請時に公的機関でチェックを受けないと着工できませんので「最低限度」はクリアしているはずです。
ではそれを上回る性能がどこまで必要なのか、どの性能をより強化した方が良いのかということになってくると思いますが、そう考えると結構難しいですね。

「生活利便性」の軸についても「一般的に考えたら」モデル住宅程度の工夫で十分かもしれませんが「私には不十分」という場合もありますから、これもお客様とプロが一緒に考えないと結構難しいように思えます。

「心豊かな暮らし」の軸に至っては、どうでしょうか、ご自身で「私はこういうことができれば心豊かな暮らしができます」というようなことが言い切れるでしょうか。
ましてや住宅会社/工務店側の営業が分かるでしょうか。
この軸が最も難しそうです。

そこでこの3軸について様々な住宅会社/工務店とお会いしたときにいくつかの質問をしてみてください。
その反応でその住宅会社をある程度評価できると思います。

住宅の基本は「安全/安心/快適」の基本性能

多くの住宅会社は公的な住宅性能評価基準の等級で自社の性能をお答えされるはずです。
住宅をモノの性能として考えれば等級が高いほど良いということになります。
ただし、等級が高いからあなたにとって良い住宅というわけでもないというのが、住宅のややこしくもあり、面白いところです。

まず前提として耐震性などの「安全」は法律で担保されています。
その上での話です。
各社の自慢の工法と性能の話はお聴きすれば、次々に「特徴」が提示されてくると思います。

同じように温熱環境性能につても各社とも独自の見解も含めて様々な工法、材料、性能をお話をされると思います。

この安全/安心と快適の分野についてはお客様の「納得」度合いについて、先ず考えて、ご自身が「なあるほど」というモノであればOKですが、最後にその性能が維持される年月を確認してください。
繰り返しの地震によっても、耐震性がどの程度担保されるのか、同じく繰り返しの地震と経年劣化で断熱気密性のは何処まで担保されるのか尋ねてください。
返答内容が「専門的でわかりづらい」こともあるでしょうけれども、それは説明が下手なだけで、まだそれなら良いと思います。
その内容が「言訳」か、「話をズラシテ正面から答えていない」会社は選ばないようにしましょう。
質問に対して担当の営業が即答できなくても問題はありません。
後日でも会社として答えられるというのが重要です。

これから先半世紀以上の年月を過ごす住宅ですから新築時の性能と経年後の性能につての見解をチェックしておきましょう。

毎日の暮らしの「生活利便性」について

「生活利便性」の軸については、モデル住宅で「あなたがこのモデル住宅に住むとして」と考えて毎日の暮らしで気になる生活の利便性をチェックしてください。

例えば現在のお住まいでは洗濯動線が良くないという場合は「洗濯という家事」を実際に行うとして、そのモデル住宅で一連の洗濯に関わるシミュレーションを行ってみてください。
使いやすいのかどうか。
もしここがどうも上手くいかないなあと思う点があれば説明係の営業の方に質問してください。
その場で解決しようと頑張ってくれたり、設計を呼んできて一緒に考えたり、どこが問題なのか再度詳しく状況を確認してくれて「ここが問題なのですね」と課題を共有して検討してくれる会社は良い会社です。
問題を先送りして営業のしゃべりたいことを話し始めたり、話しをズラスなどしてごまかすようなところは良くないと考えてもよいでしょう。

「お客様を中心に対応できる」ことが個々のお客様の「生活利便性」を高めることに繋がります。

お客様の「心豊かな暮らし」実現への対応力

「心豊かな暮らし」の軸は住宅会社/工務店にとっては最もハードルの高い項目です。

「安全/安心/快適」については一言説明したいと思っている会社は多くありますし、「生活利便性」についても「こんな工夫をしています」という「一般解」をお持ちの会社は多く存在します。

ただし、お客様である「あなた」にとって「心豊かな暮らし」を創れる能力はと言うと、ほとんどの会社が対応できていないか、不充分と言わざるを得ない状況です。

「暮らしインタビュー」という個々のお客様にとって心豊かな暮らしに気づき、一緒に創っていくという手法はあるのですが、ほとんどの会社で導入できていません。
しかし、その素養のある会社は存在します。
「心豊かな暮らし」と言ってもお客様ご本人が気づかれていないことがほとんどのため、営業や設計から「触発」して貰いお客様ご自身が「気づく」ことが重要なステップです。

「先日お引き渡したA様はこのようなガーデンテラスのリビングを創られて毎週末ご家族で昼食を半外空間で楽しまれています」というように、触発の場で体感体験させてくれるような会社は良い会社です。

「どなたか既に引き渡し済みのお宅で日常の暮らしを楽しまれておられる方はいませんか」と尋ねてみてください。
幾つかそういう事例紹介をしてくださり、画像を含めて詳しく教えてくれて、案内して下さる会社は良い会社です。
「めんどくさいなあ」とまではないでしょうが対応が鈍いとか、そういう方面には関心がないという会社は避けた方が良いでしょう。

せっかく多額の費用をかけて建築する住宅で今後半世紀以上にも亘る暮らしが、あなた自身の「心豊かな暮らし」の実現につながらないなら住まいづくりへの投資甲斐がありませんから。

素人がプロの実力を評価する

「安全/安心/快適」、「生活利便性」と「心豊かな暮らし」の3軸で住宅会社/工務店を簡単に評価することはある程度できます。
PCR検査と同じように絶対ではありません。

また、もっと多角的に評価すればよい会社を見いだすこともできますが、一般のお客様がご自身なりに良い会社を選択する一つの「物差し」として活用してください。

まとめ

戸建注文住宅を「造れる」会社は数千社ありますが本当にお客様の暮らしを中心に考えて、「安全/安心/快適」「生活利便性」「心豊かな暮らし」の3軸をしっかりと持って住まいづくりを進めている会社は残念ながら少ないというのも現実です。

「住宅というモノ」づくりの良い住宅会社/工務店は多くあっても「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいを実現」できる住宅会社/工務店は意外に少ないというのが現実です。
その中で良い会社を選択していただきたいと願っています。本稿がその一助になれば幸いです。

《執筆者》

一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士

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