30年ぶりの住宅価格上昇局面はしばらく続く
2022/04/29
コロナ禍が続く中で世界各国はコロナとの共存を掲げて落ち込んだ経済対策を積極的に進めています。
欧米各国とも景気回復に向かっていますが、特にアメリカの景気は超インフレを招くほど過熱し、住宅着工数も急激に伸びています。
そのあおりを受けて木材を中心とする資材の多くを輸入に頼っている日本の建築資材価格は高騰し続けています。
日本の木材(製材)の輸入量の世界シェアは約4%程度で、中国約26%、アメリカ約17%に比べると買い手としての発言力は低くどうしても売り手の言い値市場にならざるを得ません。
この状況は先行き不透明ですが数年続くのではないかと思われます。
ウクライナ問題もあり原油高で資材の輸送、加工コストにも影響するなど資源価格が高止まりか、もしくは上昇する要素はあっても下がる要素は中々見当たりません。
デフレが長く続いた日本では30年振りの住宅価格上昇の環境下で住まいづくりをどう進めて行けばよいのか。
住宅会社選びにも影響が出そうです。
全ての住宅会社/工務店で価格は高騰
大きく捉えれば外的要因で資材価格が高騰していますので全ての住宅会社/工務店で価格は高騰します。
そうなると予算内で希望の住宅は買えないということになり、建物サイズを小さくして、さらに仕様グレードを下げるということをせざるを得ません。
程度の差は会社によって多少あるかもしれませんがその程度の話しです。
ではどう対処すればよいのか。
住まいづくりで実現したいコトを鮮明化すること
「住まいづくりの重心を明確にする」ことを先ず最初に考えましょう。
これから半世紀以上に亘って住み続ける新しい住まいづくりです。
ご要望はたくさんあるとは思いますが新しい住いではこれだけは「実現したいコト」という視点で考えると「住まいづくりの重心が見えてきます」。
先ずこうした視点で向き合ってくれる住宅会社/工務店を選ぶようにしましょう。
何が何でも価格に合わせるためにとか、逆に「もっと予算を上げてください」という話が先行する前にお客様の暮らしと向き合ってくれる住宅会社/工務店です。
予算ではなく資金計画で考える
自己資金、ご両親様からの資金援助、金融機関が融資してくれる最大の借入可能額を先ず確認しましょう。
「Max資金計画」です。
住宅は「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいを実現」するための暮らしの器です。
従って住宅建築は「消費」ではなく「人生」への投資です。低金利が続く現在最大限の投資を有効に行うことをお勧めします。
中途半端に節約しても数千万の金額を使うことになりますから「実現したいコト」への有効な投資になるようにしましょう。
人生100年時代への投資
住いづくりはこれから先の人生への投資です。
特に健康寿命を延ばし「心豊かな人生を過ごす」には十分な投資が必要です。
人生の約70%の時間を過ごす住宅ですから。
30才で家を建てるなら70年間の人生への投資です。仮に1000万円高額の住宅になったとしても1ヵ月あたり12,000円弱の負担です。
今後益々資材が高騰することを見通せば思い切った現時点の投資の方が有効だと思います。
「お客様の暮らしを中心に考える会社」を選ぶ
「住宅の耐震性能、断熱気密性能、他社とのハードの違いなどを説明する」のが従来の住宅会社/工務店でしたがこれに加えて「価格の言い訳」が加わり、「住宅の大きさと価格」というパターンがこれから発生すると思います。
「実現したいコト」はどれだけの面積が必要なのか。
自身が望む「実現したいコト」が可能なのかが判断軸で「面積の大きさ比較」は意味を成しません。
同じ金額なら「A社の方がB社より5坪も大きい」からA社にするという話をよくお聴きしますが「ご自身に最適の住宅の判断基準」は「面積」ではありません。
コンパクトでも広く感じる住宅、大きくても狭く感じる住宅
設計者の能力で大きく異なるのが空間の「広さの感じ方」です。
「コンパクトに広く住む」住宅は機能的で暮らしやすく開放感を感じる設計をしているためコンパクトでも広く感じます。
資材価格が上昇している現在こうした住宅設計技術の低い設計者はお客様の重視しておられることが理解できず無駄な部分に面積を使ってしまい、価格を抑えることができず「お客様の要求が多すぎる」から無理という状況に陥ってしまいます。
ご自身の暮らしに強い関心を持ち如何に資金計画内にまとめるのかと考えてくれる営業と設計を選択しましょう。
イメージより20~30%コンパクトな住宅でも要望をクリアする設計
30坪以下の住宅では難しいと思いますが35~45坪程度で計画している内容を20~30%コンパクトにしてご要望を満たすことは可能です(もちろんご要望内容にもよりますが)。
そうした設計力のある設計を選ぶことが大切です。
この場合のコンパクト化する設計力とは「そのまま縮小コピー」するのではなくお客様の「暮らしの重心」は何処なのかということをしっかりと把握する力を言います。
従って営業と設計の両方の「お客様の暮らしを理解する力」の優劣で判断しましょう。
まとめ
30年ぶりの住宅価格上昇という場面は住宅会社/工務店の現役社員は未経験です。
住宅建築資金を有効に投資して「暮らしを楽しみ人生を楽しむ住まいの実現」のために、お客様の暮らしを中心に話しを聴いてくれる会社と「暮らしの重心」を共有化して無駄を省いた「コンパクトに広く住む」住宅を創りましょう。
ご不明な点はお問い合わせください。
一般社団法人住宅研究所 消費者担当 info@housing-labo.casa
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士