窓は心豊かな暮らしを創るポイント-6
2022/03/21
「窓」についての最終回です。
住まう人の視点で考えた窓の6つのメリットの順を追って考えてきましたが、これまでの「採光」「通風」「眺望」「拡がり」「出入り」に続く最終回は「窓辺」です。
窓辺の楽しみ方は未だ日本人の多くは初心者です。
最近ではハロウィンやクリスマスに窓ガラスや窓辺にディスプレイするなど窓辺の楽しみ方が広がりつつあります。
窓辺を楽しむためには窓の性能が高いことが条件
旧来の日本家屋の冬の窓辺は「すきま風」が入り「窓ガラスも単板で表面は結露」などとあまり好まれない場所でした。
最近でサッシの断熱性能も上がりガラスもペアガラス、トリプルガラスなど断熱性能が高く大きな窓でも窓辺の寒さは感じません。
窓を閉めている時間が長い冬の窓辺を楽しむ条件が揃ってきました。
昼間は暖かい日差しが差し込む窓辺。
逆に日暮れは早く、長い夜の時間を部屋の明かりの演出も含めて外部へ向けても人々を楽しませる工夫をしています。
このような窓辺を楽しむというのは太陽がほとんど顔を出さない冬の北欧を中心とするヨーロッパの暮らしを楽しむ文化です。
そうした文化を下支えしたのは北欧では早くから普及した断熱性能が高い「木製枠でトリプルガラスの窓」でした。
「衣食足りて礼節を知る」ではないのですが「窓の性能が上がって真冬でも窓辺を楽しむ」ことが出来るようになりました。
部屋でも楽しむが外部の人にも楽しさをおすそ分けするのが窓辺の楽しみ方?
画像はオランダ・アムステルダムのレンガ造りの都市中心部の住宅です。
左の画像は冬期間は室内側のカーテンとディスプレイにこだわって道行く人を楽しませてくれます。
夜間はろうそくやランプで演出もしてくれます。
室内側でも楽しんでいるのですが寒い外を行く人の心を温めてくれます。
右の画像は夏場は花の鉢植えをを窓辺の内外に飾って短い夏を楽しんでいるようです。
北ヨーロッパの人々はかなり屋外の人々への「おすそ分け意識が高い」窓辺のディスプレイです。
窓の外側は春から夏にかけては鉢植えの花を咲かせて室内外から楽しむというの北ヨーロッパ各国の暮らしの楽しみのようです。
この2枚の画像はオランダ・アムステルダムの運河に浮かぶボートハウス。
左の画像は夏はボートハウスでも植栽を工夫して外の窓辺に飾ります。
右の画像は夏冬昼夜兼用で窓辺の室内側に鉢植えの花とスタンドライトで窓辺を演出しています。
左の画像はドイツの田舎の住宅。
窓辺の花はドイツ版の肝っ玉お母さんが頑張ってゼラニュウムを咲かせていました。
右はスイスの山岳部のホテル。
まあ商売ですが頑張って花盛りです。
各家庭の窓辺を演出して「楽しもう精神」が街を心豊かなものにしています
申し合わせたわけでもないのに様々に窓辺を各家庭が競い合うように演出することで春から夏にかけては華やいだ雰囲気にしてくれますし、冬の鉛色の空、めったに顔を出さない太陽という寒い北ヨーロッパの冬でも住まう人も道行く人もみんなが心を温るように窓辺を演出します。
猫も窓辺を楽しんでいるようです。
南半球のニュージーランド・クライストチャーチの真夏のクリスマス。
左の画像は花を演出して窓辺を飾り、窓自体もデザインしたガラスの割付で窓辺の楽しさを生み出しています。
右は南半球ですからクリスマスは真夏ですので不思議な感じのクリスマスではありますが、サンタさんとトナカイ、クリスマスツリーをほぼ外部に向けて演出して楽しませてくれます。
先ずはちょっとした演出から始めましょう
ヨーロッパやニュージーランドの人達の窓辺の楽しみ方はレベルが高く参考になりますがそこまでこなれた、さりげなく高いレベルの楽しみ方は初心者には難しいかもしれません。
先ずは簡単にできることで窓辺を演出して心豊かなシーンを創ってみましょう。
窓辺に置いたキャンドルからあふれる温かみあるささやかな灯と香りを楽しむ窓辺を演出しましょう。
部屋の空間全体がとても豊かな空間に変ります。
もちろん屋外からのアンバー色のキャンドルの炎はその家に住まう人の心豊かな暮らしを優しく伝えます。
窓の内側と外側の演出
窓の内側の演出はキャンドルのように手軽に始められます。
そして窓辺の演出だけではなく香という直接癒しをとどけてくれる楽しみも加わり大いに楽しめそうです。
窓の外側の演出は窓台をつけることは簡単ですがそこにどのような鉢植えを置くのか、水やりにあまり手を掛けなくても済むような種類の花を選択してもそれなりに手間が狩ります。
窓外の演出は内開きか引き戸のサッシが原則になりますからその点も内開きが一般的な北ヨーロッパとは事情が異なります。
何処まで頑張って楽しむのか様々な角度から検討する必要があります。
先ずは室内側から窓辺を楽しむことを始めましょう。
窓枠の下端とテーブルの高さを合わせると窓辺は演出しやすい
窓枠のわずかな奥行きでもちょっとした演出が可能です。
さらにサッシの下枠との高さをテーブルなどの高さと併せると様々な演出が可能です。
壁の断熱材が省エネで厚みを増してきていますので内側に有効に使える窓台もできつつあります。窓辺の演出を楽しみましょう。
まとめ
日本でも窓辺を楽しむ暮らしをもっと演出していくとこの無言のご近所付き合いの効果も上がります。
窓辺は心豊かな暮らしのお裾分けが組み込まれていますので。
簡単にスタートしてどこまで窓辺を楽しみ心豊かな暮らしを演出するのか、相当ハイレベルな内容にチャレンジするのか。
「根性が必要なレベル」は長続きがしないので簡単なところから始めてみませんか。
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
代表 松尾俊朗
一級建築士