ひとり暮らしの人の注文住宅という選択肢
2022/05/30
注文住宅は、結婚して出産して家族が増えた人が検討するものだと思っていませんか?
令和元年に厚生労働省が調査した、現在の日本の世帯構造は、単独世帯28.8%、夫婦のみの世帯24.4%、夫婦と未婚の子のみの世帯28.4%、ひとり親と未婚の子のみの世帯7.0%、三世代世帯5.1%、その他の世帯6.3%となっており、単独世帯が全世帯の約3割を占めているとういうことが分かりました。
※参照 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h28.pdf
更に、令和2年に株式会社エイチームフィナジーが調査した、30~50代の独身者の住宅購入に関しての意識調査では、約4割の方が住宅を購入もしくは購入を検討しているということが分かりました。
※参照 https://www.a-tm.co.jp/news/marketing-16324/
つまり、世帯構造だけでなく暮らし方についても多様化が進んでいるということです。
しかし、気をつけなければいけないのが「家賃がもったいない」や「老後のため」という将来不安が理由で住宅を購入もしくは購入を検討している方がほとんどだということです。
将来の事を考えることはとても大切な事ですが、将来不安だけで住宅づくりをしてしまうと、仕事して帰ってきたら食べて寝るためだけのつまらない家になってしまう危険性があります。
では、どのようなことに気をつけて住宅づくりをしていけば良いのでしょうか。
これからの人生を考える
人生100年時代とはよく聞きますが、長いと感じる人や短いと感じる人、感じ方は様々だと思います。
誰もが、これからの人生どうなるのか分かりませんし、もちろん計画通りに進むなんてことも少ないと思います。
しかし、毎日の仕事や家事などに追われて今を必死に生きる人も、「家」という大きな買い物をすることをきっかけに、一度ご自身のこれからの人生について考えてみませんか?
そして、大まかな過ごし方をイメージするということがとても大切です。
残りの時間を把握する
毎年厚生労働省が調査している平均余命の結果(令和2年)で、男の平均寿命は 81.64 年、女の平均寿命は 87.74 年ということが分かりました。
※参照 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life20/dl/life18-02.pdf
これはあくまでも平均なので、これ以上の未来が待っているということです。
つまり、30歳で住宅建築を検討されている方は残り50~60年、60歳で住宅建築を検討されている方でも残り20~30年の時間があるということです。
生涯労働時間と引退後の自由時間
「22歳~65歳まで働いている時間」と「引退後の自由時間」は、どちらも約10万2千時間だと言われています。
■生涯労働時間(22歳~65歳)=102,125時間(平均9.5時間/日×250日/年×43年間)
※9.5時間…1日辺りの平均労働時間 250日…休日を除いた出勤日数
■引退後自由時間(65歳~85歳)= 102,200時間(平均14時間/日×365日/年×20年間)
※14時間…寝ている時間や家事の時間を除いた時間
朝食はご飯食べずに出勤して、昼食と夕食は外食しているので、家は寝に帰っているだけだから、安ければ良いなんて方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「定年退職後の自由時間」というのは、「生涯労働時間」と同じだけの時間があるということになると、本当にそれで良いのか、見つめ直す必要があります。
旅行などの娯楽に出掛ける楽しみはもちろんですが、それはあくまでも365日の内の数日でしかありません。
残りの1年の大半がおうちでの時間ということなのです。
住宅建築の初期に考えるべき3つの事
住宅建築は、考えることがたくさんありますが、初期は大きく3つの事を考えることをオススメします。
それは、「安心安全快適性」「生活利便性」「暮らし」の3つです。
安心安全快適性
特に、ひとりの人生を選択された方にとって、30年後にもう一度建て替えなければならない住宅では、配偶者やお子様に頼るようなことが出来ないため、耐久性の高い住宅が必要になります。
また、大きな地震があった際に、自宅での生活に支障をきたさないような高い耐震性を兼ね備えた住宅である必要もあります。
一度で一生涯暮らしていくことが安心して出来る住宅を検討しましょう。
生活利便性
ひとり暮らしの人の注文住宅において、生活利便性というのは、ご自身にとって究極の生活利便性をつくりあげる可能性を秘めています。
賃貸住宅や建売住宅は、一般的な平均値をとった利便性等を考慮したつくりになっていますし、ファミリー向け注文住宅というのは、住まわれる全員にとっての利便性を考えてつくるので、どちらも自分自身にとっての完璧な利便性ではないのです。
この、ご自身にとって究極の生活利便性というのは、「生活タイムスケジュール表」というシートを使って導きます。
平日と休日の朝起きてから寝るまでの事細かなルーティーンを確認し、その動きに沿った収納計画や動線計画を行うと、無駄なく効率的に考えられた住宅づくりが可能になります。
暮らし
「安心安全快適性」と「生活利便性」は、住宅というハコの価値です。
この「安心安全快適性」と「生活利便性」が良い住宅が他に入った時に、その住宅でどんな「暮らし」がしたいのかが、住宅を手に入れるうえで最も重要なことなのです。
私たちは、日々の暮らしの中で「目的」というものを見失い勝ちです。
住宅という大きな買い物を行ううえで、「安心安全快適性」や「生活利便性」が良い住宅を手に入れる事を目的とするのではなく、原点に返って自分自身を見つめ直し、そもそも自分はどのような「暮らし」がしたいのか、その暮らしを支えるためには、どのレベルの「安心安全快適性」と「生活利便性」が必要なのかを考えることが、正しい住まいづくりの順序なのです。
事例
とあるひとり暮らしの注文住宅を建てられた方のお話です。
「ひとりで住む2LDKの家が建てたいのですが…」と、来場されました。
マンガが大好きで、3,000冊くらいあり、家ではずっとマンガを読んでいる為、マンガ部屋と寝室とLDKと考えたそうです。
しかし、ひとりの住まいで、家ではずっとマンガを読んでいて、料理もあまりしないという方に、固定概念で2LDKの住まいを建てて良いのでしょうか?
結局、この方はワンルームにして、壁1面マンガが収納できるようにして、最高にくつろげる一人掛けソファを置いてマンガを楽しむ、自分にしかフィットしないオンリーワンの注文住宅を建てました。
キッチンも、フードデリバリーなどを合わせて活用するということで、ミニキッチンの設置にしました。
つまり、注文住宅というのは、自身の暮らしにとっての優先順位でどこに費用をかけるのかを選択出来るオンリーワン住宅なのですが、固定概念が捨てきれず、建売住宅などと同じような〇LDKで建ててしまう方が多いというのが現状です。
オンリーワンの注文住宅を考えたいという場合は、是非当研究所にご相談ください。
info@housing-labo.casa
まとめ
いかがだったでしょうか。
ひとりだから賃貸で良い。ひとりだから小さくて良い。とお考えの方、ひとりだからこそ家族や子供ではなく、自分自身にお金が使えるのです。
ひとりを最大限に満喫出来る注文住宅を一緒に考えていきませんか?
《執筆者》
一般社団法人 住宅研究所
「暮らし視点の住まいづくり」研究開発担当
主任 谷口真帆香